◎「たく(栲)」
「たけひ(猛火)」。E音I音の連音がU音になっている。この語は別名「かうぞ(楮)」や「かぢ(梶)」と言われる樹木性植物の名ですが、葉の形が猛(たけ)る(燃え盛る)炎(ほのほ)のようであることによる名(着目点は「かぢ(梶)」の語源に同じ→「かぢ(梶)」の項・2021年4月3日)。
「Taku タク 栲 n. The paper-mulberry : …」(『改正増補 和英英和語林集成』:「paper-mulberry(ペーパーマルベリー)」は楮(かうぞ)の英語名。「mulberry(マルベリー)」は桑の実。楮には同じような実がなる)。
◎「たくさん(沢山)」
「たけうしサン(竹牛散)。「うし(牛)」は鳴き声を表現している。「サン(散)」は散(ち)ること。すなわち、言っていることは、「竹(たけ)もう散(ち)る」。そして、「たけ(竹)」に「たけ(丈)」がかかっている。「たけ(丈)」(その項)はそれがそれとしてある全体規模。それがもう散る、とは、もはや限界を超え全体が破壊する状態になっている、まだ破壊はしていないが、もう破壊する状態になっている、ということ。なにかが「たくさん」であるとは、なにものかやなにごとかに対しそのなにかがそうなっていること。「それはもうたくさん」を、「もう」を感銘的に言い、何かが多量・多数あることへの感銘として言うことも可能ですが、通常それは「それはもうこれ以上いらない」という意味で言われる。「沢山」は「沢(さは)」に「多(さは)」をかけた当て字。「卓散」などとも書く。
「鎌倉出の宿よりも鏡宿に至るまで宿々十石づづの米をぞ置かれたりければたくさんなるによつて施行に引けるとぞ聞えし」(『平家物語』)。
「此位(これくれへ)のぼたもちだら十七八もくへば沢山(たくさん)だもし」(「洒落本」『道中粋語録(―すごろく)』)。