◎「たかし(高し)」(形ク)
「たけはやし(丈逸し)」。「たけ(丈)」は「たき・たけ」の項(その「たけ(発生け・長け)」の項)。ここでは身の丈(たけ)・身長の意。「はやし(逸し)」は経過から意外感や感銘を受けていることを表現する(「はやし(早し・逸し)」の項)。すなわち、「たけはやし(丈逸し)」―身長、そののび、がその経過に意外な感銘を生じる、とは、身長がのびていることを意味し、それは、その本人の過去と比較してものび、自己と、あるいは他者と、比較してもそれよりものびていることを意味する。「たけはやし(丈逸し)→たかし」は、そうしたことを原意とする表現。それが、人以外の他の対象に関しても言われ、さらに、社会的な意味や価値にかんしても、そこに見上げるような圧倒感のある権威性が感じられれば「たかし」と表現される。
「今(いま)朕(われ)汝(いまし)を察(み)るに、爲人(ひととなり)、身體(むくろ)長(たか)く大(おほき)にして、容姿(かほ)端正(きらきら)し」(『日本書紀』)。
「家づとに貝ぞ拾(ひり)へる浜波はいやしくしくにたかく(多可久)寄すれど」(万4411)。
「…葦刈ると 海人の小舟は 入江漕ぐ 楫の音たかし(多可之)…」(万4006)。
「『あはれ高きも賤(いや)しきも人の身に命ほど惜しき物やは候ふ』」(『平家物語』:これは身分や社会的立場)。
「中来(中ごろ)三井寺ニ智興内供ト云テ、タウトキ人有ケリ、歳(とし)タカク成テイカナル宿業ニテカ世ノ中ココチヲシテ限ニ成ケレバ…」(『発心集』:高齢ということ。「世ノ中ココチ」は流行病、世に蔓延する疫病)。
「値段が高い」。
◎「たか(高)」
形容詞「たかし(高し)」の語幹。「高嶺(たかね)」、「たかてらす(高照らす)」、「たかビシャ(高飛車)」(将棋の戦法に由来する表現)、「高笑い」、「高鳴る」、「声高(こわだか)」、その他。
「石高(コクだか)」などにある「たか」は、漢字表記の影響もあり、この語と思われることが一般です。しかし、形容詞語幹による、たとえば「こくおほ(石多)」といったような表現は不自然であり、「高(たか)」である場合、「たかがそれだけの…」などと言う場合の努力表現がない→「たか(努果量)」の項。