◎「たうめ(専)」

「たくめ(専)」の変化・音便形。→「たくめ(専)」の項(下記)。ものやことの全体、すべて、を意味する。

「故(かれ)、汝(いまし)専(たうめ)東國(あづまのくに)を領(をさ)めよ」(『日本書紀』)。

「専 ……タウメ」「専領 タウメ」(『類聚名義抄』:『類聚名義抄』に「タクメ」はない)。

 

◎「たうめ(老女)」

「たくめ」の変化・音便形。「たくめ」は「たけゐめ(長け居女)」。動詞「たけ(長け)」は年をとることも意味する。「たけゐめ(長け居女)→たくめ」は、齢(とし)長(た)けた女、ということです。齢(とし)長(た)けた狐も(「たうめ」と)言うようですが、これは比喩でしょう。ただし、この意味の「たくめ」は資料には現れていない。それは「たうめ」で現れている。

「専 …………今呼老女爲太宇女…」(『和名類聚鈔』)。

「このなかに淡路のたうめといふ人のよめる歌『……』」(1月26日)、「かゝれども淡路のたうめの歌にめでゝ」(2月7日)(『土佐日記』)。

 

◎「たくめ(専)」

「たけゐうめ(丈居埋め)」。「たけ(丈)」は人の身長やものの長さや高さ意味し、「たけゐうめ(丈居埋め)→たくめ」、すなわち、それを埋める、とは、ものやことの全体、すべて、を意味する。ある動態がすべてであったり、ある事象が原因のすべてであれば、もっぱら、ということです。

この語は音便化して「たうめ」にもなる。

「噫(あ)、入鹿(いるか)、極甚(はなは)だ愚癡(おろか)にして、専(たくめ)行暴悪(あしきわざす)」(『日本書紀』:もっぱら悪いことをしている。よいことなどない)。

「『…疫疾(えやみ)流(あまね)く行(おこ)りて、國(くに)の民(おほみたから)絶(た)ゆべし。豈(あに)專(たくめ)蘇我臣(そがのおみ)が佛法(ほとけのみのり)を興(おこ)し行(おこな)ふに由(よ)れるに非(あら)ずや』」(『日本書紀』:ほかに原因はない)。