◎「そびき(誘き)」(動詞)

「しひをびき(強ひ誘き)」。「をびき(誘き)」はある意図をもつて誘導すること(→「をびき(誘き)」の項)。「しひをびき(強ひ誘き)→そびき」は、強(し)ひて、相手の意思にかかわらず強引に、そうすること。

「切身を見せてそびけども、迂闊に乗らぬ駆引気配り」(「浄瑠璃」『新薄雪物語』:「切身を見せ」は、相手が切る(自分の)身を見せる、さぁ切れ、という体勢になる、ということでしょう)。

「なんでも屋敷へそびいて行って、筋骨抜かにゃあ腹がいえねえ」(「歌舞伎」『勧善懲悪覗機関(―のぞきからくり)』)。

 

◎「そびき(聳き)」(動詞)

「サウビ(壮美)」の動詞化(「そびえ(聳え)」の項(8月14日)参照)。「そびえ(聳え)」が客観的に表現されている動詞。意味は、壮大な美しさがあるということ。

「火の光あがりそびけり」(『三宝絵詞』)。

また、「そびき」の「びき」が「引き」の印象を与えたことによるものでしょう。「そびき」は(たとえば雲が)横に(壮美に)たなびくことなども表現する。「西の方より紫の雲聳(そびき)て来(きた)る」(『今昔物語』)。

「そびけ」という自動表現もある。