◎「そびえ(聳え)」(動詞)

「サウビえ(壮美得)」。「壮美 (サウビ:中華人民共和国音、チュアンメイ)」は、壮(さか)んで美しい、という意の漢語。壮大な美しさがあるということ。「壮美的景色」は中国語で、雄大な眺め、の意。そうした「サウビ(壮美)」を得ている、とは、堂々として立派、品格がある、のような意味になる。山に関して言われることが多い。活用語尾は一般にヤ行とされますが、現実には「そびえ」「そびへ」「そびゑ」などと書かれ、厳格な一定性はないように思われます。

「(山々は)或いは平に、或いはそびえ」(『三蔵法師伝』:これは山)。

「青き黛眉を點(えが)いて眉細長(ソビエ)たり」(『白氏文集』:(誇らしげに自分の顔に)描いた眉。『白氏文集』のこれは一般に「そびへ(繊美へ)」と言われているようですが、「そびえ(聳え)」でしょう。「そびえ(聳え)」と「そびへ(繊美へ)」は別語)。

「巖松たかくそびへて」(『平家物語』:この場合は松を言っている)。

 

◎「そびへ(繊美へ)」(動詞)

「ソビへ(素美経)」。飾らない、ありのままの、自然な美しさを経験経過している、のような意味になる。

「せんじ(宣旨)の君は、ささやけ人のいとほそやかにそびへて…」(『紫式部日記』:小柄で細身で美しさがあった)。

「人ざまいとあてにそひへて、心恥づかしきけはひぞしたる」(『源氏物語』)。