◎「そひ(添ひ)」(動詞)

「すおひ(巣覆ひ)」。「す(巣)」は人の居住施設を意味する→「す(巣)」の項(2月21日)。ある人と「すおひ(巣覆ひ)」になる(ある巣に覆われる)ということは(たとえその「す(巣)」が一時的なものだったとしても)その人との関係が同居関係になることを意味する。つまり、「すおひ(巣覆ひ)→そひ」は、関係が、世のあり方として、社会的に、同居すること。この語は元来、Aをそひ(他動表現:Aと同居し)、も、Aにそひ(自動表現:Aと同居し)、も、どちらも言ったかもしれない。そして他動表現は「そへ(添へ」が一般化していく。遠出の際などに予備用や交替用に同行させる馬は「そひうま(添ひ馬)」「そへうま(添へ馬)」どちらも言う。しかし、他動的に「そふ(添ふ)」主体とそれにより添はれる主体との主と従(副)の関係が生じることはあり、「そひづかひ」は「おほつかひ(大使)」に対する「副使」を意味する。

「彼方(をちかた)の赤土(はにふ)の少屋(をや)に霡霖(ひさめ、こさめ、と読まれますが、ながめ(ながめ:ながあめ(長雨))か)零(ふ)り床さへ濡れぬ身にそへ我妹(わぎも)」(万2683:「そへ」の原文は「副」。「そへ」は命令形)。

「御位そひて牛車(うしぐるま)許されて参り」(『源氏物語』)。

「美(うつく)しげさそひ給へり」(『源氏物語』:さらに加わった、のような意)。

「夫婦で連れそひ」。

 

◎「そひ(沿ひ)」(動詞)

「しおひ(為負ひ)」。動態を何かに負うこと。動態が、独律的なものではなく、他の何かの影響下にある状態になること。それに従うのではない。それに同動している状態になる。

「大路にそひてのぼれる青柳」(「催馬楽」:のぼる動態が大路の影響下にある状態になる。「青柳」に「大路」に融合しない同動態感が生じている)。

「おほがき(大垣)にそひていくほどに」(『古本説話集』)。

「国道ぞひのレストラン」。