◎「そで(袖)

「そで(衣手)」。→「そ(衣)」はその項参照(7月3日)。衣服を意味する。「そで(衣手)」はその「そ(衣)」の手の部分、の意。

「白𣑥(しろたへ)の衣手(そて:蘇弖)着そなふ手腓(たこむら)に…」(『古事記』歌謡97:「こむら(腓)」は別名「ふくらはぎ」)。

 

◎「そと(外)」

「そとよ(其と世)」。それとある世(よ)、「うち(内・家)」に対する「世(よ):外界」、の意。奈良平安時代にはこの言葉はなく、古くは「と(外)」と言った。「うちにもそとにも(内にも外にも)」ではなく、「うちにもとにも(内にも外にも)」→「と(外)」の項。域Aが識別され、自己はAに属する場合の域・A以外の域。「と(外)」よりも表現は客観的になっている。

「外 ソト」(『運歩色葉集』(1548年):ここに「ト」の読みはない)。「外 ………ト」(『類聚名義抄』(1000年代頃):ここに「ソト」の読みはない)。

「鬼はそと。福はうち」。

 

◎「そと」

「そろと」の「ろ」の脱落であり、「そろと」は「しおろと(為疎と)」。つまり「そろ」は「しおろ」。「しおろ(為疎)」は動態の構成にも、その動的展開性にも、空虚感があること。すなわち、動態の威力のようなものも弱く、その動的展開性もゆっくりとしていること。それが「そろ」。それに助詞の「と」がついた「そと」は、何かを食べればその食べる量が少量であったり、その動態が目立たないものであったり、刺激の弱い(あるいは無い)ものであったり、あるいはゆっくりしたものであったりすることを表現する。動態発動自体に関する「そろそろ」や動態自体の「そろそろ」もそうしたことを表現する。

心情的に表現が深まれば「そおっと」や「そっと」にもなる→「そっとしておいてあげなさい」。

「そとおん見せ候へ」(ほんの少しでいいから見せてください、の意)。「そとしたる橋」(目立たないちょっとした橋)。「案内なしにそとまゐり」(案内なしに目立たぬよう行き)。