◎「そそこし」(形シク)

「そそきをし(噪き惜し)」。「そそき((噪き)」はその項(7月19日)参照。動態がせわしなく、あわてていて、残念だ、の意。「はて若い者はそそこしい。早まって怪我するなと…」(「浄瑠璃」)。

 

(音の似た語)

・「そそかし」(形シク)―「そそをかし」。→その項。「(乳幼児・薫が)いとそそかしう、這ひ下り騷ぎたまふ」(『源氏物語』)。この語は後記の「そそっかしい」ではありません。

・「そそかうし」(形シク)―「そそけはひゆゆし(噪気這ひ由由し)」。「そそ」(あわてた、せわしない)の気(け)が尋常ではない。ひどい。「乱暴狼藉のやうにそそかうしい事はないぞ」(『毛詩抄』:「毛詩」は「詩経」の異称)。

・「そそかはし」(形シク)―「そそけはひあし(噪気這ひ悪し)」。せわしなく、あわてた様子で良くない。「殊のほかそそかはしき女房、堀の内へ参りてかへり…」(『無事志有意』:この女房は疲れた足で湯屋へ行き、足が疲れた、とほかの人の足を洗う)。

・「そそっかしい」(形シク) ―「そそほうけあし(そそ呆け悪し)」。「そそ」はせわしなく動く動態を表現するそれ。「ほうけ(呆け)」は「ほほけ(呆け)」であり「ほけ(呆け・耄け)」の項。全体は、せわしなく、あわて思考が蒸発したような状態になり良くない、の意。「私が一体麁相(ソソッ)かしい性(うまれ)で、ぞんざいものでございますのに」(「滑稽本」『浮世風呂』)。

 

◎「そそけ」(動詞)

「そそき(噪き)」の活用語尾E音化による客観的対象を主体とする自動表現。何かが毛羽(けば)だったり毛羽だつように乱れたりすること。

「そそけたる蘆の生(お)ひざまなど難波の浦にかよひて」(『源氏物語』)。