◎「そそくり」(動詞)
「そそくり(そそ繰り)」。「そそ」はせわしなく動きが現れることを表現する擬態(→「そそかし」の項・7月18日)。「くり(繰り)」は動態反復を表現する。「そそくり(そそ繰り)」は動態がせわしなく、あるいは熱心に、繰り返される。「塵を払ひそそくり」(せわしなく塵を払う動作を繰り返す)のような用い方もなされますが、単独では、ほとんど手先で何かをいじくる動作を繰り返す。
「ちご(乳児)うつくしみ給ふ御心にてあまがつなど御手づから作りそそくりおはす」(『源氏物語』:いろいろと手でいじくっている。「あまがつ(天児)」は乳幼児の守り人形)。
◎「そそくれ」(動詞)
「そそくれ(そそ暮れ)」。「そそ」は動態が促されている状態であることを表現する擬態(→「そそかし」の項)。「そそくれ(そそ暮れ)」は動態が促されながら、あたりも暗く見えなくなりどうしたらよいか分からない状態になる。たとえば、重要な人物に面会し知己を得、それにより仕事の前途が開けるはずであったが、思わぬ事情でその機会を逃した者のその逃した際の状態。つまり、「そそくれ」は、しそこなう、や、時機を逸する、のような意です。「言ひそそくれ」は、他のことに紛れたりうっかりしたりして言っていなかったような状態。この「そそくれ」の意味は「そびれ」に似ている(→「言いそそくれ・言ひそびれ」、「行きそそくれ・行きそびれ」、「出そそくれ・出そびれ」)。
「時刻違へば、敷居高く帰りそそくれ」(「浮世草子」)。