◎「そそぎ(注ぎ)」(動詞)

「そそ」の動詞化。この「そそ」は、「そそかし」の項における「せをせを(瀬を瀬を)」。何かを流れたり広がったりする水流のような状態にすること。その「何か」がそうなること。自動表現も他動表現もある。当初は「そそき」と清音。「そそく」なにかは水、雨、波、涙、血などが主ですが、塩をそそぐ、心を注(そそ)ぐ、といった表現もある。

「芳(かうばしき(かぐはしき))草(くさ)薈(しげ)く蔚(も)くして、長瀾(たかきなみ)潺(そそき)湲(なが)れ」(『日本書紀』:自動表現)。

「日頃ふりつるなごりの雨いますこしそそきて」(『源氏物語』:自動表現)。

「痛き瘡(きず)には鹹塩(からしほ)を潅(そそく)ちふがごとく」(万897:他動表現)。

「コップに水を注ぐ」。

 

◎「そそぎ(濯ぎ)」(動詞)

「すすぎ(濯ぎ)」と同じような意味で「そそぎ」と言われることがある。「汚名をすすぐ」ではなく、「汚名をそそぐ」。これは「そそぎ(注ぎ)」の「そそ」が何かが瀬(水が流れ広がる)の状態になることを表現し、それによりその何かが流れ去りなくなることの表現となったもの。「一(いつ)は冤罪(うきな)を雪(そそ)ぐが為(ため)に」(『当世書生気質』(坪内逍遥):読み仮名は原文にあるもの)。