「そり(外り)」の他動表現(「そり(反り・外り)」の項)。「そり(外り)」は対象との関係が(対象に対し、主体が)期待動態とは逆の(背(そ)の)動態になる。期待動態を否定する動態になる。「そし(殺し・過し)」は、「かり(借り):自動―かし(貸し):他動」のような関係による、その他動表現であり、何かを期待動態を否定する動態にすること。意味が期待されていればその意味が否定される動態になる。存在が期待されていれば不存在化させる。動詞連用形につき「~そし」と表現されればその動態は期待される効果を生じずその効果の空しいものになる。

 

「ものも言はず。咲(わら)はず。君を愁へ殺(ソス 別訓 ソサしむ)」(『白氏文集』天永四年(1113年)点:人を無意味化・不存在化させる)。

「『…君がため閏月をばおくにやあるらむ』とあればいはひそしつと思ふ」(『蜻蛉日記』:(三十日に三十夜来てほしい、と言ったら、それでは閏月(小の月は二十九日)に日が余る、閏月はあなたのためだったのか、と言われ)思いを大げさに言いすぎかえって思いは伝わらず失敗してしまった、のような意)。

「四位五位のものまめやかなる人々……『……我がしいでたるこそめでたけれめでたけれ』と心をやりてしそしたり。……上達部殿ばら……『我こそまさりけれ、人のは劣りたり…』など、聞きにくきまで定め給ふもをかし」(『栄花物語』:「心をやる」は、気晴らしする、のような意であり、自分の気持ちが晴々するようなことを言い自慢することでしたことの評価を下げている)。

「かくおぼゆればにや。「あまりひとを見そす」などいふも、人わろきなるべし」(『枕草子』:(この部分の前に言った)こういったことが思われるからか。(ことばなめき(尊重心が欠けている)人に)「あまりにも私の存在価値や意味を失わせている」など言うのも印象が悪い(そんなふうにも言いにくい))。