◎「そこ(底)」

「そこ(背凝)」。「そ(背)」は期待進行とは逆であることを意味しますが(→「そ(背)」の項)、これが進行が逆転することを意味し、進行が逆転しそれ以上先へは進めない凝固感を感じる情況にあるもの・ことが「そこ(背凝)」。その期待進行は他者から見たその表面。

「沼名(ぬな)河の底(そこ)なる珠(たま)…」(万3247)。

「そこついはね(底つ磐根)」(「祝詞」)。

ものごとの奥が極まった部分→「心の底から」。

 

◎「そこ(塞)」

「そけこ(退け凝)」。何かを遠ざけ退ける凝り固まった印象のもの。それにより何か(たとえば敵)から何かを守る。実体は、たとえば土塁、防壁。

「『毎(つね)に要害(ぬみ)の所(ところ)に、堅(かた)く壘塞(そこ)を築(つ)かむ』」(『日本書紀』:「ぬみ(要害)」は活動の要地の意)。

「塞 ………野王案 塞険悪之處所以隔内外也 …和名曾古」(『和名類聚鈔』:「野王」は中国の書『玉篇』の編纂者・顧野王)。

「壁 …カベ カキ ソコ」(『類聚名義抄』)」。

 

◎「そこ(其処)」

「そ(其)」(7月5日)「こ(処)」(2022年1月26日)はそれぞれその項。思念的に指し示される情況、そうした情況にあるもの・ことの現在的(今在る、の意)個別感(具体的現実感)が表現される。

もの(空間地点)もことも表現しますが、きみ、あなた、お前、のような意味で二人称にもちいられたりもする。

「『御子たち、あまたあれど、 そこをのみなむ、かかるほどより明け暮れ見し。…』」(『源氏物語』:子はたくさんいるが、お前だけを生まれたときから明け暮れ見ていた。これは人称たる「そこ」)。

「『スマホがなくなった』『そこにあるよ』」。「そこんとこよろしく」。