◎「そ(十)」
「しほ(潮)」。潮の満ち引きの印象によるものであり、一潮(ひとしほ)、二潮(ふたしほ)…、が同じ動態が繰り返される場合のその頻度数・回数を表現する。指で数えて十までが一潮(ひとしほ)であり、二十は二潮(ふたしほ)。つまり「そ」は「十(10)」を意味する単位を表す数詞。「みそぢ(三十路)」。
「百(もも)足(た)らず 八十葉(やそば:揶素麼)の木は…」(『日本書紀』歌謡53)。
◎「そ(背)」
「せう(背居)」。「う(居)」は「ゐ(居)」の終止形。「せう(背居)→そ」は、後ろ向きにあること。これが「せ(背)」の情況化表現になり、後ろ向きにあること・ものを表現する。「め(目)」→「ま(目):まつげ(睫毛)」のように、情況化はA音化によって生じますが、後ろは前との対位関係を表現する必要があり、「う(居):在(あ)ること」によりそれが、背が前になり前が背になり位置関係が逆転していることが、表現され、期待進行とは逆であることも表現する。
「吾が背子をいづく(何處)行かめとさき竹(辟竹)のそがひ(背向:背交ひ)に寝しく今し悔しも」(万1412:背中合わせに寝た。これは挽歌。万3577にほぼ同じ歌があり、そこでは「いづち(伊都知)」になっている)。
「辺(へ)つ波(なみ) そに脱(ぬ)き棄(う)て」(『古事記』歌謡5:受け容れず投げ棄て)。
「脢…… 脊傍肉 曽志之(そしし:背肉)」(『新撰字鏡』)。