◎「せへ」
動詞に(「おっしゃり」「いらっしゃり」などの)「~しゃり」がついた表現の命令形の変化。「~しゃり」に関しては「しゃり」の項(1月15日)。たとえば 「行(い)かっしゃれ」 の語尾R音が退行化し 「いかっしゃへ」、になり、後音と表現の外渉性、それによるE音化などにより、これが 「いかっせへ」、になる。意味は、相手への尊重感のある命令というか、勧(すす)めというか、そういったもの。「行かっせへ」 なら、お行きなさいな、のもう少し命令感の強い表現。
動詞 「たしなみ」 による 「たしなまっしゃり」 なら、たしなまっしゃり→たしなまっしゃれ→たしなまっさへ→たしなまっせへ。
漢語に「せへ」のついた「我慢せへ」(我慢しろ)などは、我慢しやれ→我慢しやへ→我慢せへ。
この「~せへ」は「~せい」にもなり、そう書かれもする。「我慢せへ」「我慢せい」、どちらもある。この語尾の「い」は、I音の進行感により相手を指し示すそれ→「い(汝)」の項。「~せへ」に「い」が加わり「へ」は無音化した。この「い」で相手を指し示し特定性を表現することにより命令や勧めの相手への影響性を強化する。「おい、こら」や「やい、テメェ」などの「おい」「やい」の語尾にある「い」もこれ。
「『早く往(いつ)て顔を見せてやらつせへ』と…」(「滑稽本」『七偏人』)。
◎「せぶり」(動詞)
→「せびり」の項(6月22日)。
「民の財宝をせぶり取りて奢りたる事をして」(『尚書抄』)。