◎「せどり(瀬取)」

「そへとり(添へ取り)」の濁音化。この語は、接岸地の海底が浅く、荷を海上輸送してきた船が接岸できない場合、沖合にその船は停泊し、陸から小舟が行き、その小船に荷を移しかえ陸揚げすることをいう。「そへ(添へ)」は、停泊した船に小船を添(そ)える、添加し荷を取る、ということ。小船を添えることにより輸送作業の不完全さを補(おぎな)う。この語は、江戸時代、廻船が大型化するにつれ、その船にかんしては、それが通常の荷上げ方法になっていきすますが、作業の印象が似ていることから、密輸船同士が、人に知られぬ海洋上で密輸品その他のもののやりとりをすることも「せどり」というようになる。

 

◎「せどり(竸取)」

「そへとり(添へ取り)」の濁音化。この語は、古書を商う者が、他から本を買い入れ、これを他へ売ること、それを商いとすることをいう。買ったものに添えた・添えられた(加わった)価値をとる、ということ。売買の仲介で口利き料をとるという形式になったりもするようです(口利きをしている人が商品を転売している状態になるということ)。

この語は、21世紀では、インターネット上であれなんであれ、何かを買い、これをインターネット上で買値より高値で売り利を得ることも「せどり」という。いわゆる「転売」なのですが、それは市場にあるものを買い、市場で売る。品不足を期待し商品を買い占め、これを高値で売ることは「せどり」ではない(「せどり」は、なんらかの特異事情による商品の値上がりの見込み、さらには、自分がおこなう買い占めによる値上がりの見込み、は行わない)。それは21世紀では俗に「てんばいやー」と言われる。この語は「転売屋(テンバイや)」と「転(テン)buyer(バイヤー:買い手)」が混じっているということか。

 

◎「せなか(背中)」

「せなから(背な空)」。「ら」の子音退化。「な」は情況を認了する格助詞の「な」(「まなこ(眼:目な子」)。「せなから(背な空)→せなか」は、背(せ)である何もない平面的印象部分。人体背部の腰上から肩あたりまで。別名「そびら」。

「御(み)ぐし(髪)のほどたけ(丈)に二尺ばかりあまりて、少しまろがれたる髪を、かきあらひたるすなはち、ひとせなかこぼるるまであり」(『宇津保物語』)。