◎「せせなぎ(溝)」
「せせなきひ(狭瀬無き樋)」。狭(せま)く、豊かな水流などない「ひ(樋)」であり、「ひ(樋)」は、原意的には井からの水流ですが、人工的に掘った溝や水を流す装置をも意味する。この語は、汚水路、さらには、意味発展的に。便所、を意味する。「せせなげ」という、語音が似、意味は同意といっていい語もある。これは「せせなけ(狭瀬な気)」であろう。狭く、瀬(水流)のようなもの、の意。
「溷 セセナキ カハヤ ニゴル」(『類聚名義抄』)。
「…せせなきに米かす水や捨てぬらん」(「俳諧」『犬子集』)。
「せせなぎ なかし(流し)尻の溝也」(『浪花聞書』)。
◎「せせらき」(動詞)
「せせらきき(瀬瀬ら聞き)」。「せ(瀬)」の連音と「ら」は複数を表現する。その「せせら(瀬瀬ら)」の音を聞く、瀬瀬の音(ね)がする、(状況たる)もの・こと。その流れが連用形名詞化「せせらぎ」。
「常には瀬といふは、浅くして、せせらき、上波(うはなみ)立つをいひ」(『仙覚抄』)。
「〓 セセラク ……ナミ 水ノホトリ…」(『類聚名義抄』:〓は「灣」の右上にナベブタを付けたような字。「灣(ワン)」は『廣韻』に「水曲」とされるような字であり、入り江などを意味するが、これは日本の独特の字であり独特の用法か)。
「窓ならぬ谷のせせらきふみ見つる折もうれしなともす蛍は」(『林葉集』)。