◎「せ(石花)」

「そひへ(沿ひ重)」。(岩の割れ目に)沿い重なるようにいるもの、の意。海洋生物の一種。別名「かめのて(亀の手)」。

「尨蹄子 ………和名勢……石花…二三月皆紫舒花附石 而生故以名之」(『和名類聚鈔』:「尨(バウ)」は『説文』に「犬之多毛者」とされる字(日本での読みは通常は、むくいぬ)。「舒(ショ・ジョ)」は『説文』に「伸也」とされる字)。

「…馬聲蜂音石花蜘蟵荒鹿(いぶせくもあるか)…」(万2991:原文「石花」を「せ」と読んでいる。「馬聲」は「い」で「蜂音」は「ぶ」。馬は「いいいい」と鳴いたわけです)。

 

◎「せ(畝)」

「セイ(井)」。「井」の音(オン)。これは土地の面積を表す町反畝歩制の単位の一つですが、「井」の字形が土地を囲った一区画を思わせ、単位名とされた。「畝(ムー)」は中国語で土地の面積を表し得ますが、日本の「せ」とは異なる。

 

◎「せ(諾)」

「さへ」。「さ」は情況的に何かを指し示す。「へ」は方向感のある助詞。「さへ→せ」は、そのように、の意。了解・承諾を表現する返事の言葉です。

「鹿父(かかそ:人名)の曰(いは)く、『諾(せ)』といふ。即ち言ふ所を知れり」(『日本書紀』)。

「否(いな)ともせとも言ひ放(はな)てと申(まうし)ければ」(『後撰和歌集』938詞書)。