◎「するが(駿河)」
「せいりふか(背入り深)」。「せい」が「す」の音に、「りふか」が「るが」の音になっている。背後が(山へと)深く入りそうな地、の意。後の静岡県あたりの昔の国名。海側からの印象。
「駿河(するが)の海おしへ(於思敝)に生ふる浜つづら汝(いまし)を頼み母に違(たが)ひぬ」(万3359:「於思敝(おしへ)」は、押(お)し辺(へ)、であり、「へ(辺)」はある域の端(はし)あたりの部分域であり、そこが押し延べたようになっているところが、おしへ。あまり大きくない砂浜。この語は「いそべ(磯辺)」の上代東国方言と言われている。同じような語で「おすひ」(万3385)もある。これも磯辺の上代東国方言と言われるが、薄(うす)響(ひひ)、であろう。意味は渚(なぎさ))。
「東海國 ………駿河 須流加」(『和名類聚鈔』)。
◎「するど(鋭)」
「すりフド(磨り浮屠)」。「フド(浮屠)」はサンスクリット語に由来し「仏陀(ブッタ)」も意味しますが、「塔(タフ)」も意味する(※)。ここでは塔の意。「すりフド(磨り浮屠)」は、磨(す)り上げた塔、の意。先鋭的な鋭角の印象を表現する。この語は、「するどなる」という表現もありますが、この語を語幹とする「するどし(鋭し)」(形ク)という形容詞にもなっている。ものもことも、すなわち、物的な形態だけではなく、人柄や社会情況なども言う。「風俗するど」は風俗に攻撃的な荒々しさが感じられる。「詞するどに云い放つ」は、厳しい口調で言う。
※ 「浮屠(フト・フド)」はサンスクリット語「बुद्ध (ブッダ:仏陀)」の漢字による音訳であり、「塔(タフ)」はサンスクリット語「स्तूप (ストゥーパ:この語は、卒塔婆(そとば)、にもなる)」の漢字による音訳による語であり、「すりフド(磨り浮屠)」の「フド」は「フド・ストゥーパ(仏陀塔)」の下略であり、「フド・ストゥーパ」は仏陀の遺骨(舎利)を納める施設でもあり。そうした理由で、「浮屠(フト・フド)」が仏陀も塔も意味する。
「長十丈余の一鬼神を現ぜり。頭の上より火出て炎天にあがり、四牙剣よりも利(スルド)にして、眼日月を掛たるが如し」(『太平記』)。
「逞(はなはだ)卒機尖(スルド)なれば、……千騎に足ぬ小勢にて懸合すべしと不覚」(『太平記』:「卒機」は、兵の働き、ということか)。
「鋭い剣」。「するどい砲勢」。「的を射たするどい指摘」。