◎「すはゑ(楉)」
「すはええ(す生え枝)」。「すはえ」とも書く。「す」は伸びていく動感を表現する。真っすぐに伸びていく細い枝。これは鞭(むち)にも使えるわけであり「すはゑ」は刑具の鞭も意味した。「楉」の字は、中国で、植物名・柘榴(ザクロ)がこの字で「楉榴」と書かれる字ですが、日本では、「木」が「若(わかい)」という意味で、老化していない、伸びていく若い枝を意味し、この字がもちいられたのでしょう。中国の字がそのままもちいられた和製漢字というようなもの。万3262では「楉垣」と書いて「みづがき」と読まれていますが、これも生命の輝きを感じる若い木の垣。歌では、会わずにいるとそれが痩せ枯れそうだ、と言っているわけです。
「笞(ほそきすはえ)杖(ふときすはえ)」(『日本書紀』:これは刑罰種を言っている)。
「楉 …シモト スハヘ」(『類聚名義抄』)。
(参考)「枝條 …………和名之毛止(しもと) 木細枝也」(『和名類聚鈔』・木具)・「笞 …和名之毛度(しもと)」(『和名類聚鈔』・刑罰具)。
「五尺ばかりなる蛇(くちなは)の、ただ同じやうなるを、『いづれか、男、女』とて奉りたり。また、さらにえ知らず。例の中将行きて問へば、『二つ並べて、尾の方に細きすはえをさしよせむに、尾はたらかさむを、女(め)と知れ』と言ひければ…」(『(能因本)枕草子』)。
◎「すひ(吸ひ)」(動詞)
この「す」は口による吸気動態を表現する音に由来する擬態。「す」の努力情況になること。
「接我唇吻 接正可作唼字 與咂喉字同…入口曰咂 倭言須布。 唇口也。 吻…謂唇兩角頭邊也 口左岐良(口先ら)」(『華厳音義私記』:「接我唇吻」の「接」「唇」「吻」の音(オン)や意味を説明しているわけです(音(オン)にかんする説明部分は省略した))。
◎「すぶし(隘し)」(形ク)
「すべゐうし(窄べ居憂し)」。狭苦しいこと。