「せゐほほみ(背居頬身)」。「せゐ」のE音I音の連音はU音化し「す」になり「すほほみ」は「ほ」の連音は促音と半濁音化を生じさせ「み」は母音も子音も退行化しつつ「む」へそして「ん」に、なった。「せゐほほみ(背居頬身)→すっぽん」は、これは亀によく似た爬虫類の一種の名ですが、その生体の背部(せ:背)のあり方(ゐ:居)が丸く、なだらかに膨らみ人体の頬(ほほ)のような(亀の甲羅のように硬く角質化したものではなく)柔らかな身(み)のようなもの、の意。別名「どろがめ(泥亀)」。
「すっぽん」という語は、平安時代はおろか、室町時代の節用集(簡易辞書)にもない。享保二(1717)年に出版された『書言字考節用集』には「すっぽん」も「どろがめ」もなく、「鼈 カハカメ」がある。「鼈(ベツ)」はスッポンの意(カハ、は、川ではなく、皮でしょう)。「すっぽん」は江戸時代に浄瑠璃や戯作関係の者がつくった特別な語かもしれない。
「浮き揚(あが)らんとする所を、櫂(かい)も折(を)れよと畳(たた)みかけ、打てば沈み浮(うか)めば打ち、息もつがせず泥龜(すつぽん)の、泥を泳ぐが如くにて…」(「浄瑠璃」『国姓爺合戦』)。
「すほん これかはかめ也 俗胴亀と云 畿内にて、どんかめ又すつほんとも云…………江戸にてすつほんと云…」(『物類称呼』(安永四(1775)年):ここにはいくつかの地方名も書かれますが、畿内と江戸で「すっぽん」と言っているということは、都市部でそう言っているということでしょう)。