◎「すっぱい」(形)

「すはやい(酢早い)」。促音化、半濁音化し「や」は退化し「すっぱい」になった。形容詞「はやし(早し)」は効果が特異的に秀でていることも意味する(→「はやし(早し・逸し)」の項)。つまり「すっぱい」は、酢の効果(日常的にそれは味覚にかかわるもの)が特異的に秀でていること(「しょっぱい」も参照・1月17日)。

「SUPPAI,―KI―KU スツパイ 酸味… Sour in taste(味覚の酸味):……:suppai mikan(スッパイ ミカン), a sour orange(酸味のオレンヂ)…」(『改正増補 和英英和語林集成』)。

 

◎「すっぽかし」(動詞)

「すっぱほかし(水破放棄し)」。「すっぱ(水破)」は欺(あざむ)いたり騙したりすること(→「すっぱ(水破)」・4月20日)。ここでは、予期や期待にそわない、約束を守らない、こと。「ほかし(放棄し)」はなにごとかを放棄された状態にすること(下記)。すなわち、「すっぱほかし(水破放棄し)→すっぽかし」は、約束を守らずものごとを放棄され棄てられた状態にすること。会う約束をしながら「すっぽかされた」という用い方をされることが最も多い。

「『ヤァ、ここは三条ではござりやせぬか。ソレ見や北八、さつきの女どもが飛んだすつぽかしを教へやァがつた』」(『東海道中膝栗毛』:この「すっぽかし」は人をいつわるようなこと。いいかげんなでたらめ。騙し偽るようなことを投げ捨てるように与えられたわけです)。

 

◎「ほかし(放棄し)」 放下し   「ハウキ(放棄)」が活用語尾K音の自動表現動詞のように扱われた他動表現。「わき(沸く):自」→「わかし(沸し):他」のような変化。ものごととしては受け身、放棄された状態になる。投げ捨てる、のような意味になる。「放下(ハウカ)」という中国語はあり、「ほかし」はそれに動詞「し(為)」がついた語とも言われるのですが、その場合、活用は下二段活用になるでしょう。

「サテ此分ニテホカサンモ不便(ふびん)也。乳ヲ取テ養育サスヘキ歟(か)」(『多聞院日記』天正十四年十二月三日:これは見た夢を説明しており、百舌鳥をとらえたら人の赤子だったという話)。

「放下 ホカス  投 ホフル ホカス」(『書言字考節用集』)。

「大体(たいてい)の用なら放下(ほか)して。かならず御出(おいで)と…」(『当風辻談義』)。