◎「すそ(裾)」
「せゐしほ(背居潮)」。(進行方向の)後ろにある海の潮(しほ:満ち引きする潮)のような印象のもの、の意。そのような印象の部分。何かが進行する場合、その何かから後ろへ流れ消えていくような印象部分です。「着物のすそ」。「山すそ」(地の一点が上昇し地に付着しつつ後ろへ流れ消えていくような印象部分)。「髪のすそ」は、流れるような(ある程度の長さのある)、髪の末端部分。馬の足先を「すそ」と言ったりもする。その進行により後ろへ流れ消えるような印象部分。「川のすそ」は下流を言う。水は下流へ流れますが、それを流す河はそれにより上流へ進行しているような印象ということ。
「嗚呼見(あみ)の浦に舟乗りすらむをとめらが玉裳(たまも)の裾(すそ:須十)に潮満つらむか」(万40:「鳴呼之浦(あみのうら)」は現・三重県鳥羽市小浜付近)。
「裾 ………和名古呂毛乃須曾 一云岐沼乃之利 衣下也」(『和名類聚鈔』)。
◎「すだき」(動詞)
「すすたたき(煤叩き)」。たまった煤煙を叩き舞い上がったような状態であること。単位体が無数に群れその単位体は一つ一つが独自に動き回っている。非常に多数群れ集まっている鳥や、草原に沸き立つようにあがる虫の声などを言う。「野もさはに鳥すだけり」。「つぼのやり水に蛍の多くすだくを見て」。「藻にすだく白魚」。「まくらにすだく松虫」(もちろん、その声が、です)。
「なつそびく(夏麻引)海上滷(うなかみがた)の沖つ洲に鳥はすだけど(簀竹跡)君は音もせず」(万1176:「なつそびく(夏麻引)」はその項。「音」は古くから、おと、と読まれているわけですが。「ね」であって「寝(ね)」がかかっているのではないのか)。
「すだきけむ昔の人もなき宿にただ翳(かげ)するは秋の夜の月」(『後拾遺集』)。