「せゐしひふみ(勢居強ひ踏み)」。「せゐ」のU音I音の連音がU音「す」に、「しひふ」が「す」に、なっている。「せ(勢)」は、「せき(急き)」「せめ(迫め・責め・攻め)」「せり(迫り)」などに現れる「せ」、S音の動感とE音の外渉感により外渉的(他へ、環境へ、働きかける)動感・進行感が表現される、動態の進行、動態勢力昂進が表現される「せ」。「ゐ(居)」は存在・現実化が持続感をもって、たしかなこととして、自己受容されている(→「ゐ(居)」の項)。そうした、「せ(勢)」なる「ゐ(居)」が人の意思の及ばないことであることとして、「しひ(強ひ)」であることとして、絶対として(→「しひ(強ひ)」の項)、踐(ふ)まれていること、実践経過されていること、が「せゐしひふみ(勢居強ひ踏み)→すすみ」。「せ(勢)」なる「ゐ(居)」が「しひ(強ひ)」て、絶対と、「ふまれ(踏まれ)」(実践され)ている。たとえば、「Aは橋まですすみ」は、「橋はまだ」の状態にあるAが、「まだ」が終わった状態へと、動態勢力昂進にある存在の現実が人の意思の及ばない絶対の実践を履行していることが表現される。Aは、そうではない位置から、橋にかんし「まだ」が終わった位置へと、移動した。「すすみ」による実践・経験経過はものにかんしてもことにかんしても起こりますが、ものの場合、特別な事情下にない限り、そのものは空間的に移動する。「道をすすむ」、「事故処理を終え、電車はゆっくりとすすみだした」。ことの場合、その経験経過は、そのことの特性が勢力昂進・影響力昂進するものとなる。「勉強がすすむ」、「病状がすすむ」。人の動態にも言う。「食(ショク:食べること)がすすむ」、「気がすすまない」、「すすんでものごとをする」。「涙すすむ」は涙が昂進的にあふれてくる状態になる。「…現世後生頼み思し召されつる新院さへ先立たせ給ひぬれば、とにかくに託(かこ)つ方なき御涙のみぞ進みける…」(『平家物語』)。時空環境変動。「時間がすすむ」。社会的・価値意味的にも言う。「位がすすむ」。「すすんだ科学」。

他動表現は「すすめ」。対象をすすむ状態にすること。

「ますらをのすすみ(須須美)さきたち(先立ち)ふめる(踏める)あとを(足跡を)みつつ(見つつ)しのはむ(偲はむ)ただにあふまてに(直に会ふまでに)」(『仏足石歌』)。

「家思ふと情(こころ)すすむな風まもり好(よ)くしていませ荒しその路(みち)」(万381:「風まもり」は、風の様子をよく見て、の意。「みち(路)」は海路でしょう)。