「すすゆき(煤雪)」。体表が銀白色であり、煤(すす)を帯びたようでもあることの印象による名。魚の一種の名。この魚は出世魚と言われ、成長に応じて名が変る。小さいものは「せいご」、少し大きくなると「ふっこ」、成魚は「すずき」。「せいご」は「せいがほ(『せい』顔)」。これは、(チビが)『~せい(~しろ)』と人に命じている(※)かのような顔だ、ということであり、この魚は下顎を前へ突き出し顎(あご)をあげ、態度(というよりも表情か)が偉そうな印象であることによる名。「ふっこ」は「ふけっこ」。「け」は無音化した。なにかを、誇る、自慢する、のような意味の「ふけ(誇け)」という動詞がある(→「ふけり(誇けり)」の項)。「っ」は、いぢめっ子、のそれのようなものであり、「る」の促音化であろう。「こ(子)」は愛称。つまり「ふけっこ→ふっこ」は、誇っているやつ、自慢してるやつ、のような意味であるが、これも、下顎を前へ突き出し顎(あご)をあげ、なにかを誇っているかのような印象であることによる名。つまり、小さい頃に顎(あご)を突き出し『~せい』と人に偉そうに生意気な口をきくのが「せいご」、少し成長しなにかを誇っているのが「ふっこ」、完全に成長すると「煤雪(すすゆき):汚れたような雪。煤をかぶったようだが、美しい」。

「…釣(つり)爲(せ)し海人(あま)の 口大(くちおほ)の尾翼(をはた)鱸 訓鱸云須受岐 さわさわに…」(『古事記』)。

「鱸 ……和名須々木 貌似鯉而鰓大開者也」(『和名類聚鈔』)。

※ 命令を表現する「~せい」に関しては「せへ」の項。この魚の名にかんしては、魚名自体よりも、命令・強い要請を表現する「~せへ・~せい」(「言はっせへ」「我慢せい」)、その基礎にある(「おっしゃり(仰り)」その他の)「~しゃり」、動詞「ふけり(耽り)」「ふけり(誇り)」が問題になります。