◎「すこし(少し)」

「すきこしゐ(隙越し居)」。何か(ものでもことでも)が隙(すき:何かに生じた狭い間(ま))を越(こ)したかのようであること。小規模・少量であること。漢字では「小、少、微、細、寡」などと書く。

「玉篋(たまくしげ)小(すこ)し開(ひら)くに白雲の箱より出でて…」(万1740)。

「むへむへしき御物語はすこしばかりにて花の興に移り給ぬ」(『源氏物語』)。

 

◎「すこしき(少)」

「すこしひき(少し低)」。少(すこ)しだけ低(ひく)い、という意味ではない。「すこし(少し)」は小規模・少量であることを意味する→その項。「ひき(低)」は小さく縮小していくような印象を表現する→その項。「すこしひき(少し低)→すこしき」は、小規模・少量であり小さく縮小していくような印象であること。すなわち、ものや規模・程度が非常にちいさいこと。この「すこしき」が形容詞であるかのような印象に影響された「すこしく」という表現もある。

「尾(を)に至(いた)りて劒(つるぎ)の刃(は)少(すこしき)缺(かけぬ)」(『日本書紀』:この「少」は古訓はすべて、すこしき、であり、すこし、ではない)。

「大きなる利を得んがために少しきの利を受けず」(『徒然草』)。

「復(また)、小(すこしきなる)雄鶏(みにはとり)を以(も)て、呼(よ)びて天皇の鶏(みにはとり)と爲(し)て……」(『日本書紀』雄略天皇七年八月)。

「〓 ……須古志支奈留」(『新撰字鏡』:「〓」は人偏「亻」に「𠣏」。「𠣏」は「丐(カイ)」と同字であるらしい。意は、乞う、や、求める)。

 

◎「すげみ(皺み)」(動詞)

「すひうげみ(吸ひ穿げ見)」の独律動詞化。「うげ(穿げ)」は穴があいたりすること(その項)。「すひうげみ(吸ひ穿げ見)→すげみ」は、吸って穴が開いたように見えること。吸って穴が開くとは、そこへ周囲が集中し落ち込んでいるかのように穴が開いたような状態になること。歯が抜けた老人の口を表現する。

「古(ふ)りがたくなまめかしきさまにもてなして、いたうすげみにたる口つき思ひやらるる声づかひの、さすがに舌つきにて、うちされむとはなほ思へり」(『源氏物語』:「さすが」という語は、さすがに横綱は強い、の系列と、さすがの横綱も病気には勝てない、の二つの系列がありますが(→「さすが」の項・2022年6月30日)、ここは前者であり、さすが、あの人は老いても「うちされる」人(「され」を現す人)、ということ)。