◎「すけ(助け)(動詞)
「しうけ(為受け)」。語頭の「し(為)」は動態や事象の進行であるが、「すくなし(少なし)」(3月16日)の場合の「しうけ(為受け)」の「し(為)」は一般的であるのに対し、「すけ(助け)」の場合の「しうけ(為受け)」の「し(為)」は個別的・具体的であり、ある人のすること、したいこと。それを「うける(受ける)」、引き受けること、それが「しうけ(為受け)→すけ」。その「すけ(助け)」により、他者が為(し)を受(う)けてくれることにより、その何者かは負担が減少したり、困難を引き受ければ救われる。人がすすめられながら飲めず難渋している酒を代わって飲んでやることやなんらかの費用の一部を負担することなども「すけ」(援助)という。柱などにその正立を維持する補助のように添えられる柱などを「すけ」や「すけばしら(助柱)」と言ったりもする。
この語は、「て(手)」のA音化たる、手(て)の情況にあるなにごとかであることを表現する「た(手)」が語頭について「たすけ(助け)」にもなる。
「戦(たたか)へば 吾(われ)はや飢(ゑ)ぬ しまつとり 鵜飼(うかひ)がとも(鵜飼たち) 今(いま)助(すけ:須氣)に来(こ)ね」(『古事記』歌謡15:「しまつとり」はその項)。
「其時、内前殿すけさせ給はば右京殿討死有間敷(あるまじき)に、内前殿一ゑん(まったく)弐(すけ)させ給はず」(『三河物語』)。
「榰柱 ……榰 柱 今案和名須介 支屋𢽽也」(『和名類聚鈔』巻15・調度部下第22・造作具第196:「𢽽(キ)」は定まらなかったり不成だったりすること)。
◎「しまつとり(枕詞)」
「しまちゆとり(為待ちゆ取り)」。語頭の「し(為)」は意思的・故意的な動態であることを表現する(→「し(為)」の項)。「ゆ」は経験経過を、それゆえに手段・方法を、表現する助詞(→「ゆ(助)」の項)。すなわち「しまちゆとり(為待ちゆ取り)→しまつとり」は、待つことによって取ること・もの、ということなのですが、何をとるかというと、食べ物であり、魚です。この表現が「う(得)」(食べ物を手に入れる)を表現し、鳥の名「う(鵜)」にかかり、「うかひ(鵜飼)」にもかかる。この語はそうした慣用的な表現がなされた語なのであるが、鳥たる「鵜(う)」の別名のような状態にもなる。
「… 戦(たたか)へば 吾(われ)はや飢(ゑ)ぬ しまつとり(志麻都登理) 鵜飼(うかひ)がとも(鵜飼たち) 今(いま)助(すけ:須氣)に来(こ)ね」(『古事記』歌謡15:「助(すけ)」は上記)。
「…鮎走る 夏の盛と しまつとり(之麻都等里) 鵜飼(うかひ)が伴(とも)は 行く川の 清き瀬ごとに 篝(かがり)さし なづさひ上(のぼ)る…」(万4011)。
「𪇸鶿 辨色立成云大曰𪇸鶿…日本紀私記云志萬豆止利(しまつとり) 小曰鵜鶘…俗云宇(う) 爾雅注云𪇸鶿 水鳥也 觜頭如鈎好食魚者也」(『和名類聚鈔』)。