◎「すぐり(選り)」(動詞)

「すぐれ(勝れ)」の他動表現。「すぐれ(勝れ)」はその項。その他動表現たる「すぐり(勝り)」は、優秀なものにすること。優秀なものにする、とは、優秀なものと認め、選ぶことです。

「えりすぐり(選(え)りすぐり)」。「えらびすぐりたる上手をととのへたり」(『宇津保物語』)。

 

◎「すぐれ(勝れ)」(動詞)

「すぎゆりえ(過ぎ許り得)」。「ゆり(許り)」は世に許されること(→「ゆり(許り)」の項)。「すぎゆりえ(過ぎ許り得)→すぐれ」、すなわち、過ぎていることが世に許される、とは、なにものかやなにごとかが一般を透過した存在状態でありそれが認められていること。つまり、一般を超えていると評価されていること。たとえば「武芸にすぐれ」は武芸を透過した存在状態でありそれが世に許され認められている。否定をともない「気分がすぐれない」といった言い方をしますが、この場合の「すぎ(過ぎ)」は日常的な経過。気分としてその日常的な経過が評価されない状態になっている。

「『……今(いま)妾等(やつこら)顏色(かほ)不秀(すぐれず)、加以(また)、情性(ひととなり)拙之(つたなし)』」(『日本書紀』:私たちは特に美人というわけでもなく、と言っている)。

「駿馬…駿…漢語抄云土岐宇万 日本紀私記云須久礼太留宇万 馬之美称也」(『和名類聚鈔』)。

「我が先に設けしに佐(すぐ)れたり」(『日本霊異記』巻中・十四「窮女王歸敬吉祥天女像得現報緣」:これは、想像を絶しすばらしい、ということか)。

「人は、かたち、ありさまのすぐれたらんこそ、あらまほしかるべけれ………めでたしと見る人の心おとりせらるる本性見えむこそ口をしかるべけれ」(『徒然草』)。