◎「すくみ(竦み)」(動詞)
「せひきふみ(背引き踏み)」。「ふみ(踏み)」は実践すること。「ひき(引き)」は「低(ひき)」でもあり、下方へ引かれる。「せひきふみ(背引き踏み)→すくみ」は、身体に、背中を下方へ引くような、収縮させるような、動態反応が起こること。
多くは「身がすくむ」や「手足がすくむ」や「立ちすくむ」という表現ですが、「唐の紙の、いとすくみたるに、草書きたまへる」(『源氏物語』)は質的に収縮した印象の硬(かた)そうな紙。「事業がすくみ」は、事業展開にのびのびとした発展がなくなり、凝縮していくような状態になること。老いて歯が抜けたりし、口元が収縮しているような印象であることを「口すくみ」と言ったりもする。
「おとゞ(内大臣)の御掟(みおきて)、あまりにもすくみて…」(『源氏物語』:その方針があまりにも凝縮した印象で、やわらかな柔軟性に欠ける)。
◎「すくめ(竦め)」(動詞)
「すくみ(竦み)」の他動表現。竦(すく)んだ状態にすること。「首をすくめ」。「肩をすくめ」。「(人を)抱きすくめ」。
「真名(まむな:漢字)をはしり書きて、さるまじきなか(どち)の女、文(ふみ)に、なかば過ぎて書きすくめたる、…」(『源氏物語』:思考や心情が凝縮するような印象で書かれている。原文は「なか」が横に「どち」と書き直されている。文末はネットなどでは「かきすすめたる」が一般のようですが、国立国会図書館にある二十巻本のそれ(「帚木」)では「すくめ」に読める)。