◎「すくね(宿禰)」

「すけひね(助け日値)」。「すけ(助け)」はその項参照。「すけひね(助け日値)→すくね」は、補助が日の値(あたひ)ということですが、それほどの根本的な頼りになる人。有力な補助者を言うわけですが、世の中に重要な人、というような尊称になっているでしょう。歴史的には「武内宿禰(たけのうちのすくね)」が有名。日の助けになる人、それほど価値ある重要な人、という意味で、発生的には尊称として生まれたのでしょうけれど、この「すくね」は古くは「かばね(姓)」の一つにもなった(「八色姓(やくさのかばね)」(684年):真人(まひと)、朝臣(あそみ)に次ぐ三位)。

「すくね」は古く「足尼」と書いた(足(ソク)と尼(ニ)の音)。「阿曾美爲朝臣 足尼爲宿祢(阿曾美を朝臣と為し足尼を宿禰と為す)」(『続日本紀』宝亀四(773)年五月辛巳:「阿曾美(あそみ)」を「朝臣(あそみ)」に、「足尼(すくね)」を「宿祢(すくね)」に、表記を変えたということ)。

「……、大水口宿禰(おほみくちのすくね)、……、三人(みたり)共(とも)に夢(いめ)を同(おな)じくして奏(まう)して言(まう)さく」(『日本書紀』崇神天皇)。

「大前小前宿禰(すくね:須久泥)」(『古事記』歌謡81)。

「大伴宿禰家持」(万629題詞)。

 

◎「すくなびこな(少名毘古那(神名))」

「すくねなひこな(宿禰な彦な)」。「すくね(宿禰)」はその項(根本的な頼りになる主体、の意)。「な」はなにごとかを認了する。「すくねなひこな(宿禰な彦な)」は、その「すくね」たる「日(ひ)の子(こ)→ひこ」の意。これは神名。

「故(かれ)、それより、大穴牟遲(おほなむぢ:大国主命)と少名毘古那(すくなびこな)と、二柱(ふたはしら)の神(かみ)相並(あひならばして)、此(こ)の國(くに)を作(つく)り堅(かた)めたまひき」(『古事記』)。