「しうき(為浮き)」。たとえば「Aをしうき(Aを為浮き→Aをすき)」の場合、Aを為(し)、なにものかが浮(う)く、認知に表面化する、現れる。「造(つく)り」に意味が似ている。土表面を浮かせるように剥がし、崩し、独自の(自分の意図に適(かな)いそれまでと異なった)存在化を生じさせ((土を)鋤き)、水中の繊維片を平面状に形成し独自の存在化を生じさせ((紙を)漉き)、水中の存在生物の取得もし((小魚を)掬き)、長い紐状のものを縦横(たてよこ)に組み結び形成し独自の存在化をさせ((網を)網き・造き)、髪の流れを一筋一筋揃え整えそれまでとは異なった独自の存在化を生じさせ((髪を)梳き)、肉を削ぎとるように薄く切り肉塊の存在感とはことなる独自の存在感を生じさせ((肉を)剥き:これは料理名「すきやき」の「すき」(肉を剥(す)いて焼いたもの、の意))、食物を摂取しその食べ物に体内でエネルギーとなる独自の存在感を生じさせ(喰き)る。

 

「又高尾張邑(たかをはりのむら)に土蜘蛛(つちぐも)有(あ)り、………皇軍(みいくさ)葛(かづら)の網(あみ)を結(す)きて掩襲(おそ)ひ殺(ころ)す」(『日本書紀』:造き)。

「金鋤(かなすき)も 五百(いほ)ちもがも すき撥(ば)ぬるもの」(『古事記』歌謡99:「いほち(五百ち)」の「ち」は、「つ」が数を確認する(→「つ(箇)」の項)ところの「つゐ」。その「つ」たる有り:鋤き)。

「紙屋(かんや)の人を召して……心ことに清らにすかせ給へるに」(『源氏物語』:漉き)。

「いざたべ(たまへ)隣殿、大津の西の浦へ雑魚すきに…」(『梁塵秘抄』:掬き)。

「真次の梳いて呉れたのを総髪にゆはせ」(『夜明け前』島崎藤村:梳き)。

「斵……スク ケヅル キル」 (『類聚名義抄』)。

「亀の甲を薄く美しくすいて」(『尚書抄』:剥き)。

「子麻呂等、水を以て飯(いひ)送(す)く」(『日本書紀』:喰き)。「松の葉をすきてつとむる山伏だに…」(『源氏物語』:喰き)。