◎「すがる(似我蜂)」

「すげられゐ(挿げられ居)」。尾が挿(す)げられたような印象であることを表現した。これは昆虫の名ですが、この昆虫は尾部と胸部が一点でついているような形状なのです。「すがるをとめ(すがる乙女)」という表現は腰の細い(スタイルの良い)女を意味した。「じがばち(似我蜂)」の別名。蜂の一種の名「じがばち」は「じガンばち(じ願蜂)」でしょう。「じー」という翅音(はおと)が何か願(ガン)をかけているような印象を与えた。

「水縹(みはなだ)の 絹の帯を ………わたつみの 殿の甍(いらか)に 飛び翔ける すがる(爲軽)のごとき 腰細に 取り餝(かざ)らひ」(万3791:「餝」は「飾」と同字。この部分、「よそほひ」とも読まれますが、『類聚名義抄』の「飾・餝」にその読みはない。また「よそひ」は客観的な自己に努力すること)。

「〓 …須加留」(『新撰字鏡』:「〓」は「羸」の上部が「罒」になっている字。通常は「蠃」と書きそうです)。

 

◎「すかんぽ(酸模)」

「すかみほほ(「酸」噛み頬)」。「す(酸)」は、すし(酸し)、すっぱい、のそれであり、「すかみほほ(「酸」噛み頬)→すかんぽ」は、そうした「す」な、(それを)噛(か)んだ頬(ほほ)になるもの、の意。つまり、それを噛むと、いかにも、すっぱい、という(とりわけ頬の)表情になるもの、ということです。これはある種の植物の名であり、イタドリ(虎杖)の別名。この植物は酸が強く、葉や茎を噛むとすっぱい(大量に食べるようなものではありませんが、食用にはなる)。「いたどり(虎杖)」は「いたちをり(い立ち折り)」でしょう。語頭の「い」は進行を表現する。この植物は、内部中空の茎が、まるで竹のように、節をつくりつつ伸びるように伸び、その節で折れるように曲がったりもする。そうした形状特性による名。漢字表記は一般に「虎杖」であり、これは漢名。中国ではこの植物の茎を杖にもし、その表面の模様が虎斑に似ているとして「虎杖」と呼んだという。

「すかんぽ」は別植物「すいば(酸葉)」の別名にもなっている。この植物も酸が強く、すっぱい。「すいば」は「すいひは(「酸」言ひ葉)」でしょう。『す(酸)』と言っている状態になる葉のもの、ということ。

「酸摸 すいば 畿内にてすいどうと云 江戸にてすかんぼと云 西国にてすいばといふ …」(『物類称呼』:「すいどう」は「すイントウ(酸咽頭)」か。すっぱい咽頭になるもの、口と喉の間あたりが「酸(す)い」という状態になるもの、ということ)。