◎「すかし」(動詞)
「すかはし(素買はし)」。「は」のH音は退行化した。「す(素)」は純粋な、夾雑物・混じり気の無い、そのままの、といった意味のそれですが(→「す(素)」の項)、この場合は「す~」の「~」の部分が動詞連用形(→「柴かこふいほりのうちは旅だちてすとほる風もとまらざりけり」(『山家集』))。「かはし(買はし)」は「かひ(買ひ)」の使役型他動表現。「かひ(買ひ)」の使役型他動表現は文法では一般に「かはせ(買はせ)」でしょうけれど、「かはし(買はし)」という表現もある。「すかはし(素買はし)→すかし」は、なんの夾雑物もなくただ買わせている、ということなのですが、どういうことかというと、買わせている、ということは、売っている、ということであり、この場合は自分を売っている。しかし、それはただ対価を支払わせて買わせているだけであり、人がその対価の支払いによってうけとる何かはなにもない、ということなのです。つまり、売って代金は払わせるが買った人は何も受け取らないという状態。それが「すかはし(素買はし)→すかし」をする状態。そして、自分を売るためにすることは、身なりや髪型その他の外観であれ、態度や言動であれ、自分には値がある、自分は高価であり高値、という印象を生じさせる努力をすることなのです。そうした努力をすることが「すかし」。この語は、気どる、すます、に意味が似ている。神奈川の方言とも言われる俗語であり、値もない者が自分には値があるかのような外的印象努力をしているという意味で言われる。「すかした野郎だ」。
◎「すかすか」
「すくはすくは(透くは透くは)」。「は」は提示であるが、これが詠嘆になる。「すくはすくは(透くは透くは)→すかすか」は、通行感・透過感のあることを詠嘆的に表現する。「すかすかと走り寄る」。「すかと切る」。「中身がすかすか」。「気持ちがすかっとする」。