◎「す(鳥)」

「せおひ(背覆ひ)」の音(オン)変化。「そひ」のような音を経つつ「す」になった。背を覆(おほ)ふもの、の意。これは後には「とり(鳥)」と呼ばれることが一般的な動物の一種の名ですが、この動物は飛ぶなどし移動する場合以外、普段は羽で背を覆うようにしている。この名は後世では単独で用いられることはないようですが、「すずめ(雀)」、「からす(烏)」、「うぐひす(鴬)」、「もず(百舌)」、「ほととぎす(時鳥)」、「かけす(懸巣)」などの鳥の名に残る。

 

◎「す(酢)」

この「す」は、S音の動感により酢酸刺激による浸透感、その味覚的な生態反応を表現する擬態。食用になるある種の酸性液体。飯とともにつけこんだ自然発酵による魚介類の酢漬けは古代からあり、これは「すし(寿司)」の起源にもなり、酸化した酒も古くからありますが、「す(酢)」が商品として醸造されるようになるのは室町時代ころでしょう。

「酢酒 ……一名苦酒……和名須」(『本草和名』(918年))。

「北八『コリャいゝことがある。酢(す)を一升も買つて来て、彌次さん、おめへに呑(のま)せよふ』 彌『なぜ、酢をのむとどふする』 北八『ハテ、酢をのむと痩せるといふことだから』」(『東海道中膝栗毛』(1802-14年):原文で「酢」にふってある読み仮名は「春」の変体仮名)。