◎「しんがり(殿)」

「シングンやり(進軍遣り)」。「やり(遣り)」は対象をその自由に放任することですが、「シングンやり(進軍遣り)→しんがり」は、進軍を進軍に放任する。つまり、そのまま進軍させる。どういうことかというと、軍隊の進軍に妨害が入った場合、その妨害は全軍で排除し進軍が進むわけですが、そうはならない場合がある。どういう場合かというと、とりわけ重要なのは、軍隊の撤退の場合です。敗戦や形勢不利により撤退する場合。そういう場合、敵軍が勝に乗じて嵩(かさ)にかかって追跡し攻撃してくる。これを排除し進軍を進軍させることやそうする人が「シングンやり(進軍遣り)→しんがり」。通常の進軍の場合にも背後からの攻撃はありうるでしょうけれど、とりわけ重要なのは撤退の場合です。これは進軍列の最後尾の人や部隊を意味する。この語の漢字表記は「殿」が一般ですが、この表記は、進行列の最終了部なので「しり(尻・後)」。「しり(尻)」を漢字で「臀(慣習的に、デン)」。同音で尊意をこめて「殿(デン:との)」ということでしょう。なぜ尊意がこめられるのかといえば、他を生かすために自分が死ぬからです。

「上野ヘ打越大勢催シ景春ヲ可退治トテ太田道真ヲ殿ニテ利根川ヲハタリ那波ノ庄ヘ引退」(『鎌倉大草紙』)。

「殿 シンガリ シツハラヒ 軍ノ後(しり)へ也。……謂鎮軍後以打払敵」(『書言字考節用集』:この語はこの書の「巻四 人倫門」にある。「シツハラヒ」は、しっぱらひ→しりっぱらひ(後払ひ))。

 

◎「しんこ (糝粉)」

これは米(粳米(うるちまい))を粉末状にしたものや、それを湯でこね、蒸し、搗(つ)いたものを言う。「真餻」とも書く。「こめこ(米粉:小女子)」→「しひむこ(強ひ婿)→しんこ」という言葉遊び。