◎「しめし(湿し)」(動詞)
「しめり(湿り)」の他動表現。湿(しめ)った状態、水分を含んだ状態、にすること。
「目釘(めくぎ)を湿(しめ)す」(刀剣の、柄(つか)において刀身を固定する目釘に水分を含ませると刀身は抜けにくくなるそうです。それを湿らせることは戦いの準備)。
◎「しめり(湿り)」(動詞)
「しめ」は「ひしひいめ(干強ひ斎め)」。「ひ」のH音は退行化した。「ひ(干)」の意味は、乾くこと、乾燥すること。その連用形。「いめ」は「いみ(斎み・忌み)」の命令形。命令形は文法では一般に「いめよ」ですが、「『所を去(のき)て忌(い)め』」(『今昔物語』) 「汝(な)が心ゆめ(勤)」(万3305)、といった表現もあり、「いめ」でも不自然さはない。「ひ(干):乾くこと。乾燥すること」を「しひ(強ひ)」「いめ(斎め)」とは、乾くこと、乾燥することをこころがけ、しっかりと、十分におこなえ、ということ。この表現が、とりわけ生乾きの衣服にかんし、「これは「しめ」」と言われ、「しめ」が、水を感じさせるほど濡れてはいないが、水分が完全に抜けたとは感じられない、乾燥していないもの(とくに衣類)を意味し、それを感じさせる情況も表現するようになった。しっとりと濡れていたり、濡れているような気分であることを表現する「しめじめ」や、情況が乾き乾燥しているようではないことを表現する「しめやか」といった表現がある。この「しめ」の動詞化が「しめり(湿り)」。意味は、なにかが「しめ」であること。なにものかやなにごとかが、水を感じさせるほど濡れてはいないが、水分が完全に抜けたとは感じられず、乾燥していないこと、乾いていないこと。赤ん坊の「おしめ」もこれ。漏らした尿によりそうした状態になるから。「しめり」は火勢や風雨などが衰えることなども表現します、これは湿(しめ)ればものは燃えにくくなるからということでしょう。「しめりたる人」がしっとりともの静かで落ち着いた人であったりもし、「しめりて思う」が、あらためて落ち着いてよく考える、であったりもする。宴会の座がしめれば、座に賑やかさがなくなり静かになる。
他動表現は「しめし(湿し)」。
「二藍(ふたあゐ)の指貫(さしぬき)に、あるかなきかの色したる香染(かうぞめ)の狩衣(かりぎぬ)、白き生絹(すずし)にくれなゐのとほす(透す)にこそはあらめ、つややかなる、霧にいたうしめりたるをぬぎ…」(『枕草子』)。