◎「しみ(浸み・染み)」(動詞)
浸透的影響進行の原因となるものは色、匂い(香り)、味など、さまざまです。ものごとや人が影響を引き起こすこともある。たとえば芸事が影響を引き起こした場合、それが人々に深い感銘を与え沈黙させるようなことであれば、「しみ」は座が物音のない状態になったことを意味し、それが人を賑(にぎ)ははせるようなことであれば、「しみ」は座が笑いに満ちたような賑やかな状態になったことを意味する(つまり、「しみた」が必ずしもしんみりとした静かな状態になったことを意味するわけではない)。
「…しかるを、汝すがたは聖人(ヒジリ)に似て心はにごりにしめり」(『方丈記』:「しめり」は「しみ(浸み・染み)」に完了の助動詞「り」がついているもの。「しめり(湿り)」ではない)。
「『…。我が心ながら、いとかく人にしむことはなきを、 いかなる契りにかはありけむ』」(『源氏物語』)。
「君もさはあはれを交はせ人知れずわが身にしむる秋の夕風」(『源氏物語』:これは上二段活用形)。
「殊に教と云ものは、人の心に親くはしみぬもので………教への書物を見せるよりは………事実(ことのあと)の軍書を見たる方が、深く心にしみこんで………実のはなしが、身にしみじみと、髪も逆だち、涙もこぼれるほど、心に深く染(しみ)るものでござる」(『古道大意』(1824年):これは上一段活用形)。
「独身のころと違い、あの人も最近は言うことがすっかり所帯じみている」(言動に生活の苦労、家族を持つことの苦労が感じられる)。「そんなこと、気狂(きちが)いじみている」。
◎「しみ(凍み)」(動詞)
「しめゐひ(締め居氷)」の動詞化。凝固した氷の状態になること。つまり、しっかりと凍(こほ)ること。「しみこほり(しみ氷り)」という言い方もする。意味発展的に極度に冷却することも表現する。この動詞は上二段活用です。
「凍 シム」(『色葉字類抄』)。
「恥づかしく、かたじけなく、かたはらいたきに、朝夕、涼みもなきころなれど、身もしむる心地して、いはむかたなくおぼゆ」(『源氏物語』:身が縮み凍っていくような思いがした、ということ)。