◎「しま(縞)」

「しま(為間)」。「し(為)」は意思的・故意的であることを意味する。故意的「間(ま)」とは、意図的に間(ま)を置くこと、そのように表された柄(がら)・模様、の意。間(ま)のある幾筋もの線状・帯状の模様を言う。

漢字表記は「島・嶋」(どちらの字も「鳥」と「山」であり、「山」の位置が違うだけで、同字と言っていい)とも書く。「しま」という音(オン)においてそれがなじみ深かったということでしょう。「縞(カウ)」は『説文』に「鮮色也」とされる字であり、この字は日本語の「しま(縞)」は意味しない。中国語では「しま(縞)」は「条紋(チャオウェン)」と言う。

「しまもの」という語があり、室町時代以降、特に東南アジア方面から(そのあたりの島々から)輸入された様々な物品を言い、この語は、俗に、出所のわからないもの、得体の知れないもの、といった用い方もされ、そういったものに線条柄のものが多かったのでその柄(がら)を「しま」という、という語源説が相当に一般的になっていますが、これはなんの根拠もない。線条柄の織物は大陸、すなわち中国からのものの方が多いのではないのか(その点は不明ですが)。ちなみに、線状・帯(おび)状の模様は室町時代や江戸時代に突然生まれているわけではなく、ましてや室町時代ころ輸入品によって世の中にそのような模様があることを初めて知ったわけでもない。そうした柄(がら)は古代からある。これは人間の知的産物として地球上のどこであれ、いつであれ、あることなのです。ならば、「しま」という言葉が生まれる前にそれはなんと呼ばれていたかといえば、基本的には「すぢ(筋)」。室町時代のいわゆる「名物裂(めいぶつぎれ)」に「かんだう・かんどう(間道・広東・漢島・漢東)」というものがあり、これが縞(しま)のこととも言われますが、これは元来の意味は「カンタウ(嵌当):(なんらかの意匠を)嵌(は)め当(あ)てる」でしょう。刺繍のような織物のこと。

(参考)「Cando(カンドー).i. Nukijirono mon(ヌキジロノモン).  Lauor con o ro sa,ou folhagem de peça tecida de fio Vermelho,& branco(赤と白の糸で編んだバラ、または葉の模様?)」(『日葡辞書』)。

 

◎「しま」(1)

「しむま(滲む間)」。滲(し)み始めた間(ま)。今そうなったとき。「云ひしま」は、言うやいなや。

「正月しまに叩かっしゃる」(「咄本」:正月になったとたんに)。

 

◎「しま」(2)

「いしもや(石もや)」。石ででもあるのか、の意。非常に重いことを意味する江戸時代の駕籠かき仲間での用語。

「えらいしまな荷でござんした」(「歌舞伎」)。