◎「しほどけ」(動詞)

「しほととけ(塩と溶け)」。この助詞の「と」は、「彼と私」のような、並立を表現するわけではなく、のような、動態を形容するそれ(→「と(助)」の項)。「しほととけ(塩と溶け)→しほどけ」は、潮解性(→「しほたれ(塩垂れ)」の項)のある塩の状態で、塩となって、溶ける、ということであり。液化していくような状態になること。衣類などがぐっしょり濡れたり、人が心情的にそうなり心が嘆きに沈んだりする。

「(雨が少し降り)田子の袂(たもと)もしほどけたり」(『栄花物語』)。

「五月雨にもあはれにてしほどけ暮し、田子の袂に劣らぬ有様にて」(『栄花物語』)。

 

◎「しほはゆし(鹹し)」(形ク)

「しほはゆし(塩映ゆし)」。「はゆし(映ゆし)」はその項。塩(しほ)が映(は)え倦(う)むような思いを感じること。味覚としてしょっぱいこと。「しははゆし(鹹し)」というよく似た語もある。

「志ほ (名) 鹽 白穂ノ略カト云 潮水(ウシホ)ニテ製スル鹹(シホハ)ユキモノ、潮水ヲ沙上ニ澆(ソソ)ギテ、日ニ晒シ…」(『日本辭書 言海』)。

 

◎「しほひ(慕ひ)」(動詞)

「しひおひ(強ひ追ひ)」。「しひ(強ひ)」はそれが宇宙や自然のおおいなる意思であるような情況でその動態があること→「しひ(強ひ)」(12月11日)・「し(助・副助詞)」(8月27日)の項。「しひおひ(強ひ追ひ)→しほひ」は、それが宇宙や自然のおおいなる意思であるような情況で何かを追うこと。

「離苦得楽せしめむとして深く薬師如来の真の身、妙なる躰を慕(しほひ)給へり」(『東大寺諷誦文稿』)。