◎「しびり(痺り)」

「しぶみいり(渋身入り)」。「しぶ(渋)」(その項)が(口ではなく)身に入ること。現実に、筋肉内などに、(たとえば柿の)渋(しぶ)が入るわけではありませんが、体感として、そのような感覚が印象として感じられる状態になること。体内に何かが浸みたように恒常的に違和感が生じる状態になり痛みがともなったりもする。運動麻痺・知覚麻痺が起こったりもする。狂言の『しびり』では「持病の痺(しびり)」が発(おこ)った太郎冠者が『一あしも引(ひか)れませぬ』と言い、しきりに『いたやいたや(痛や痛や)』と言っている(ただしこれは仮病)。「しびり」は漢字では多く「痺」と書きますが正字は「痹」。「痹症」は関節痛を意味するようです。「痹」もリュウマチを意味し得るらしい。太郎冠者の仮病はリュウマチかもしれない。

この語は動詞化しておらず、「しびりて」や「しびらずに」といった表現はない。ただし、大小便や水などを、まるで惜しむかのように、少しづつ出す(あるいは、それらが、出る)ことを意味する「しびり」という動詞はある(これは「しみひり(浸み放り)」であり、「ひり(放り)」が大小便の排泄をまとめて意味したか)。

 

◎「しびれ(痺れ)」(動詞)

「しびり(痺り)」の動詞化。「しびり(痺り)」になること。「しびり(痺り)」はその項(上記)。

「(長時間正座し)足がしびれた」。

思考や心情がマヒし正常に機能しなくなるような感銘を覚えることも言う。「常盤(ときは)御前とて、それはそれは美しい君………………四つ這ひに、はふはふ明くる障子の内、燈火幽(かす)かに寝姿を、見るよりぞつと身もしびれ」(「浄瑠璃」『平家女護島』)。