◎「しとね(茵)」
「しつをね(為つ小寝)」。「つ」は同動を表現する(文法における一般的な説明では、関係を表現し、位置や存在の場所を示すことが多い、と言われる。たとえば、「沖つ波」の場合、波の位置や存在の場所が沖だということ)。ここで同動を表現する、とは、沖と波が同じ言語動態に帰属する、ということであり、言語表現として、「沖つ波」は、「おき(沖)」とある「なみ(波)」・「なみ(波)」とある「おき(沖)」、だということ。たとえば「時つ風」の場合、「とき(時)」は「かぜ(風)」の位置や存在の場所ではなく、それは、「とき(時)」とある「かぜ(風)」・「かぜ(風)」とある「とき(時)」であり、その風が吹くことは、その時、となった風が吹く。「しつをね(為つ小寝)」の「しつ(為つ)」も、「し(為)」となった、あるいは、なる、なにかであり、「し(為)」となる、とは、いつでも、どこでも、しようとおもったときそうなる、ということであり、それによりなにをするかというと、「を(小)」(ちいさな、ちょっとした)「ね(寝)」をする。つまり「しつをね(為つ小寝)→しとね」は、いつでも、どこでも、(本格的ではない)ちょっとした寝たるもの、とうような意味であり、この語が、様々な素材でつくられた、後世の座布団よりは相当に大きい、しかし本格的な(敷)布団よりは小さい、厚手の敷物を意味する。これに座しもし、寝もし(本格的に眠るのではなく、身を横たえ、やすむ)、ときにはここに琴をおいて奏したりもする。
「茵 ……和名之土禰 茵褥…以虎豹皮爲之」(『和名類聚鈔』)。
◎「しとみ(蔀)」
「しつよみ(為つ世見)」。「しつ(為つ)」に関しては「しとね(茵)」の項(上記)。意味としては、いつでも、思ったときに、ということになる。「よ(世)」とはここでは外の世界であり、家(居住施設)の外。居住施設としては、平安時代の寝殿造りのそれがもっとも知られる。すなわち、「しつよみ(為つ世見)→しとみ」は、いつでも、思ったときに外を見るもの(そういう設備)、ということですが、たとえば、柱と柱の間に設置し、その半分ほどの上部が外側へはねあがり開(ひら)くことができ、開(ひら)いたまま棒でとめておくこともできる。その調節により、室内を明るくすることも(光を遮断することも)でき、雨風を防ぐこともできる。窓のようなものですが、壁が開(ひら)くといった方がよいような設備。
「席障子(むしろしとみ)を以(も)て鞍作(くらつくり)が屍(かばね)に覆(おほ)ふ」(『日本書紀』:これは皇極天皇時代のものであり、平安時代ではない。古くは「しとみ」として「むしろ (筵)」が張られたりもしていたということでしょう。ここでいう「鞍作(くらつくり)」は蘇我入鹿(そがのいるか)の異称であり、すなわちこれは「大化の改新」時の記事。その遺体が尊重して扱われていないことが表現されている)。
「篰 ……字亦作蔀 和名之度美 覆暖障光也」(『和名類聚鈔』)。