◎「しじみ(蜆)」
「しみいしみ(締み石見)」。「しみ(締み)」は「しめ(締め)」の自動表現。収縮すること。「しみいしみ(締み石見)→しじみ」は、収縮した石を見るようなもの、の意。これは貝の一種の名ですが、その殻表面の幾重もの輪状の皺が全体が縮まった印象であることによる名。
「住吉(すみのえ)の粉浜(こはま)のしじみ(四時美)開けもみず隠(こも)りてのみや恋ひわたりなむ」(万997)。
「蜆貝 ………和名之々美加比 似蛤而小黒者也」(『和名類聚鈔』)。
◎「しじみ(縮み)」(動詞)
「しじみ(蜆)」の動詞化。全体が収縮・萎縮すること。物的にも動態的(心情的)にも言う。意味は「ちぢみ(縮み)」に酷似している。
「悄 …ウレフ………シシム」、「巻 マク シシム」、「戚 ………ウレヘ イタム シシム」、「粛 ……シジム……ウヤマフ…ツツシム」(『類聚名義抄』)。
◎「しじめ(縮め)」(動詞)
「しじみ(縮み)」の他動表現。「しじみ(縮み)」の状態にすること。主体的に客観的動態を衰弱させる。声をひそめたり、食事の量をへらしたり、自然界に溜まっている水量をへらしたり等する。
「声ひきしじめ、かしこまりて 物語しをるを…」(『源氏物語』)。
「此蓋を開たる櫃の中へ、御身を縮(シジ)めて臥させ給ひ…」(『太平記』)。
「『…まづ朝夕の御飯を日ごろよりは少ししじめられ候ひて…』」(『古今著聞集』:食べる量を少し減らせということ)。
◎「しじまひ(縮まひ)」(動詞)
「しじみはひ(縮み這ひ)」。「しじみ(縮み)」の情況になること。動態が収縮・凝縮したようになり、なにもできない状態になること。進退極まる。
「棲遑(しじま)ひてその跋渉(ふみゆ)かむところを知らず」(『日本書紀』)。