◎「しこ(四股)」

「シコ(四股)」。どちらも漢字の音(オン)。「股(コ)」は股(もも)を意味する。股(また)を十分に割った状態で膝をほぼ直角に曲げ地を踏む。その状態を前から見ると「四」の字(腿には筋肉があり、下線は大地)の印象になることによる表現。相撲でだけ用いられる特殊な言葉です。

「しこを踏む」。

 

◎「しこな(四股名・醜名)」

「しこな(醜名)」。「しこ(醜)」はその項(9月28日)。相撲の「しこな(四股名・醜名)」は自己謙遜しながらも人間を超えた自然界の獣のような力があることへの誇りが込められ現れていますが、この語は、本名とは別の、社会に通用している通用名、のような意でも用いられている。「四股名」という表記は相撲界でのもの。

「『明理のらんかうに行成がしこな呼ぶべきにあらず。いとからい事なり』」(『大鏡』)。「らんかう」は「亂(乱)行」ないしは「濫行」。これは藤原行成の言葉であり、竸馬(くらべうま)において勝負判定の太鼓を打っていた讃岐前司・明理(さぬきのぜんじ・あきまさ)という人物が太鼓を打ち間違え、負けにされた馬上の人がくやしさのあまり『…かゝれば明理行成と一雙にいはれ給ひしかども…』と明理をののしるように言ったことに応(こた)えたものですが、言ったことは「(漢語の)明理の(漢語の)乱行に(漢語の)行成はなりたたないぞ」ということでしょう。この藤原行成(ふじわらゆきなり)という人は「ふじわらかうぜい(こうぜい)」とも言われ、それが通用名のようになっていた。つまり、通用名を、謙遜しつつ、「しこな」と表現している。つまり、「しこな」という語は相撲界で生まれているわけではないということです。現代では相撲界でしか用いられていません。