◎「しけこみ(しけ込み)」(動詞)

「しけ」は形容詞「しけし(蕪し)」の語幹「しけ」。粗末なひどさ、廃れた、といった印象を表現する。「こみ(込み)」は「おさまる」のような意味で言われている。堂々と誰に恥じるでもないのではなく、隠れるように、気づかれぬように、こそこそと、や、粗末な、廃(すた)れた印象で、どこかへ入りおさまった状態になること。

「『ヒヤア八兵衛、かへてうせたな(客を替えたな。また客をのせたな→もうかってやがるな)。畜生(ちくしやう)め、はやういて(はやく家へ帰って)嚊(かか)が番(ばん)をしされ、密夫(まをとこ)めがしけこんでけつかるは』」(『東海道中膝栗毛』:これは二川(ふたがは)における、雲助(くもすけ)とも呼ばれる、駕篭舁どうしの会話)。

 

◎「しけし(蕪し)」(形シク)

「しひけし (廃ひ異し)」。「ひ」の無音化。「しひ(廃ひ)」・「け(異)」(2021年12月14日)・「けし(異し)」(2021年12月22日)はその項参照。「しひ(廃ひ)」は機能不全を意味しますが、社会的機能不全、意味・価値として機能しないことも意味する。「しひけし (廃ひ異し)→しけし」は、廃(し)ひだ、通常にないほど、異常に廃ひだ、それほどひどい、という表現。この形容詞の語幹「しけ(蕪)」は動詞「しけ(無機能け)」の連用形ではない(「しけいと(蕪糸・絓絲)」の「しけ」は動詞「しけ(無機能け)」の連用形)。

「葦原のしけしき小屋(をや)に…」(『古事記』歌謡20)。

「蕪…アレタリ…シケシ……ケカラハシ…」(『類聚名義抄』)。

「蕪……穢也…荒也逋也 志介志(しけし)…」(『新撰字鏡』:「逋」は『説文』に「亡也」、『正韻』に「欠也」とある)。