◎「しきだい(色代)」

「シキでタイ(式出体)」と「しいきダイ(爲生き代)」の二種がある。

 

・「シキでタイ(式出体)」。式(シキ)が出る(現出する・現れる)体(タイ:あり方)。そうすることで、その人も、その人が影響されその人も影響を与える全体も(つまり、その人も含めた全体が)、「式(シキ)」となり、式が完成する体(タイ:(言語活動も含めた動作の)あり方)。「式(シキ)」は、決まりごとに従ってことをすすめること。すなわち、「シキでタイ(式出体)→しきだい」は、決まりごと通りに行う、人のあり方、です。

「色代して、しづしづと歩み、信頼卿の上にむずとつき給ふ」(『平治物語』)。

この語は儒学的な意味での「礼(レイ)」の意にもなり(「色躰 シキダイ 礼」(「節用集」室町末期))、自らは辞退し人に譲る謙遜した作法を意味したりもするようになる。

「御しきだひを被成而(なされて)大和大納言殿を上座へい(居)かはらせ給ふ」(『三河物語』)。

さらに、これが、俗に、形式的な、上辺(うはべ)だけの、儀礼的な人のあり方、の意にもなり、外交辞令的な世辞、さらには追従 (ツイショウ:(特に、権力のある)相手の心情を恐れこれに嫌われまいと、あるいはこれに気に入られようと、これの心情を配慮する隷従的な言動をする(これは「追従」の日本独自の用法)) したり言ったりすることも意味するようになる。

「色代にも、御年よりも遙か若く見え給ふと云ふはうれしく」(『沙石集』:これは世辞)。

「しきたい」とも言う。これは「式体(シキタイ)」。式のあり方。意味は「しきだい」と、事実上、変わらない。漢字表記は、慣用的に、「色代」のほか、「色体」「式代」「式台」といった表記がなされる。

 

・「しいきダイ(爲生き代)」。「代(ダイ)」は、代(か)はり、代はりのもの・こと、の意。「しいきダイ(爲生き代)」は、何か(B)をすることで他のすべき何か(A)が生きるその何か(B)、(A)をしたことになる(Aが生きる)代(か)わりたる(B)、その(B)たるものやこと(ことの場合はそれをすることも)が「しきだい」。つまり、代替行為や、何かを納める場合の代替物であり、その代替行為をすることや代替物を納めることです。Aの「しきだい」Bは、BをしたりBを納めることによりAをしたりAを納めたりしたことになる。年貢米に替わって納められる金銭を「しきだいセン(色代銭)」と言い、米納に代え他の産物で納めることを「しきだいナフ(色代納)」と言ったりする。

「上古 以預節會 爲大望 多依給禄綿也 件(くだんの)綿本(もと)大宰府所進也 而 近代帥大貮申色代 (綿)三百両代絹一疋 仍(よって)無望預節會人」(『江家次第』巻十一・被補欠侍従事:色代(しきだい)を申し…)。

 

◎「しぎ(鴫)」

「しくり(為繰り)」。「くり」が「ぎ」の音になっている。「くり(繰り)」をするもの、という意味なのですが、なにを繰(く)るかというと、足を繰る。これは鳥の名ですが、この鳥は足が長く、これを繰り(手前へそして上へ引くように)動かして歩くことが印象的であったことによる名。鴫(しぎ)には一本足で立つ種や脚を折り曲げて立つ種もある。「鴫」は日本で作られた漢字。

「鸗 ……之木 一云田鳥 野鳥也」(『和名類聚鈔』)。