◎「しうと(舅)」

「しひと」の変化であり、「しひと」は「しひひと(癈ひ人)」。「しひひと(癈ひ人)」は無力化したような人というような意味。どういうことかというと、「しうと(舅):後には「しゅうと」」・「しひと」は配偶者の父親を意味しますが、古代における、男が女の家へ行く婚姻形態の場合、若い男が家に来た場合、子供作りも終わり生活作業の力も老いて衰えてゆく妻の男親(しうと)は家庭内でほとんど何の力も無い存在になっていく。「しひひと(癈ひ人)」とはそういう意味。配偶者の女親は二次的に「しひとめ・しうとめ(女)・しゅうとめ(姑)」と言われるようになる。「〓 呼昆反 婦人之父 〇比止」(『新撰字鏡』(天治本):〇部分判読不能。「〓」は「㛰」のような字であり、中国の書に「㛰」は「婚」と同字とあり、また中国の書に「妻父曰昏」とありますが、そういうことか。つまり、この字の女偏は姑(しゅうとめ)ではなく妻を意味し、妻の「昏」が「しひと」。ちなみに「昏」は「日冥也」や「暗也」と書かれる字)。「㛰 呼昆反 婦人之父 志比止」(『新撰字鏡』(群書類従本))。ちなみに、『新撰字鏡』の「媛」の部分に「志比止女(しひとめ)」とあるのは、中国の儒学的「礼」による、その美称ということか(「媛」は中国の書に「美女也」と書かれるような字)。さらにちなみに、後に「しゅうと」と読まれる「舅」の字には「母之兄弟」という説明はあるが「しひと」という読みは書かれていない。また、後に「しゅうとめ」と読まれる「姑」の字にも「夫之母」という説明はあるのだが「しひとめ」という読みは書かれていない。

ちなみに、「しうと」あるいは「しゅうと」という音に関しては、「わかひと」がA音U音の連音により「わかふと・わかうと」→「わこうど」になっていますが、「しうと」あるいは「しゅうと」に関しても、資料的根拠はなにもありませんが、「しひやひと(癈ひ家人):癈(し)ひた家人」といった言い方があり、「しひやひと→しやひと→しふと・しゆと」といった変化が起こっているのかもしれません。

21世紀では配偶者の父が「しうと・しゅうと」であり配偶者の母が「しうとめ・しゅうとめ」ですが、古くは配偶者の母も「しうと・しゅうと」と言われたこともある。

「舅 …夫之父曰舅 和名之宇止」「姑 …夫之母曰姑 和名之宇止女」(『和名類聚鈔』夫婦類第廿九:どちらも「夫之」であり、「妻之」ではない)。

「外舅 …妻之父爲外舅」「外姑 …妻之母爲外姑」(『和名類聚鈔』夫婦類第廿九:これは「妻之」ですが、和名が書かれていない)。

「姑 シウト 舅 同」(『運歩色葉集』(1548年):どちらも、シウト、と言っている)。

 

◎「しあさって(明後日の翌日)」

「あすひしあさって(明日日為明後日)」。「あししあさって」のような音を経、語頭の「あ」は無音化し、「しあさって」になった。「あすひしあさって(明日日為明後日)→しあさって」は、明日(あす)の日(ひ)を為(し:そう想定し)、明後日(あさって)、の意。すなわち、今いる日の次の日(明日(あす))を想定し、その日にあると仮定した明後日(あさって)。今いる日が一日(ついたち)とすれば四日。