◎「ささ(小竹)」

風に揺れたり、その中を歩いたりする際に発する音(擦過音)による擬音。小さな竹類を言う。

「天宇受賣命(あめのうずめのみこと)…………天香山(あまのかぐやま)の小竹葉を手草(たぐさ)に結(ゆ)ひて 訓小竹云佐佐(ささ)」(『古事記』:「たぐさ(手草)」の「くさ」は「種」であって、手の種類のもの、とは、手で持つ持ち道具、というような意味でしょう。小竹(ささ)を幾本か束ね結ったものを手に持ちアメノウズメノミコトが踊ったのです)。

「小竹(ささ)の葉はみ山も清(さや)に 亂友 我れは妹思ふ別れ来ぬれば」(万133:「亂(乱)友」の読みは「さやげども」・「みだれども」・「みだるとも」があり、とくに「さやげども」・「みだるとも」両説の争いのような状態になっているのですが、「みだるとも」と聞いて、ほとんどの人が、現代で言えば、乱れても、という意味だと思うように思われます。しかし、古くは「みだり(乱り)」は他動表現であり(※下記)、後世で言えば、乱す、ということ。つまり「小竹(ささ)の葉はみ山も清(さや)に 亂(みだ)るとも…」は、現代的に言えば、み山も清(さや)に乱すとも、ということであり、歌意は、「ささ」は誘う声でもあり、その声は私の心を乱そうとするが、乱しても、私は妹を思い続ける、ということ(つまり、読みは「みだるとも」だということ)。

※ 自動表現は古くから「みだれ(乱れ)」ですが、他動表現が「みだし(乱し)」になる過程で自動表現「みだり(乱り)」も現れる。他動表現「みだし(乱し)」が現れるのも自動表現「みだり(乱り)」が現れるのも平安時代初期でしょう。

・酒(さけ)の異名に「ささ」がある。「今女ノ言(コトハ)ニ酒ヲさヽト云」(『撈海一得(ラウカイイットク)』(1771年):「女ノ言(コトハ)ニ」とは、酒を意味する「ささ」は女房詞だということ)。これに関しては、これは「笹(ささ)」であり、中国で酒を「竹葉」と言ったからと言われるわけですが、「さ」の竹(たけ)、という意味で「ささ(笹)」と言ったのでしょう。「さ」の「たけ」とは、他(タ)ではない、サのタケ、ということであり、サケ(酒)ということ。ちなみに、中国でなぜ「竹葉」が酒の異名になったのかに関しても諸説ありますが、中国の詩にある「酒中浮竹葉 杯上寫(写)芙蓉」(『遊九龍潭』(唐の時代の詩))といったことの影響でしょう。竹の葉は漢方薬でもあり、それを酒に浮かべて飲むことが雅な遊びだったのでしょう。

・ちなみに、日本で「ささ(小竹)」の漢字表記になっている「笹」は和製漢字。中国語ではない。字の由来は「葉」の「木」を取って上が「竹」になりました、というもの。

 

◎「ささ(細・小)」

「さあさ(さ浅)」。「さ」は情況的に動感を表現する。「さあさ(さ浅)→ささ」は、その動感が希薄であること。すなわち動態感が微かであること。

「ささなみ(ささ波)」。「ささやか」。

 

◎「さざい(栄螺)」

「さはサイ(多犀)」。「犀(サイ)」は動物名ですが、ここで言うのはその犀の角(つの)です。多数の犀(サイ)の角のようなものがあるもの、の意。貝の一種の名。別名「さざえ」。

「予又内々へ參、さヽい數十被下之」(『言継卿記』天文十五(1546)年三月二十日)。

「Sazai. Cierto genero de marisco(ある種の貝)」(『日葡辞書』)。

◎「さざえ(栄螺)」

「さはささえ(多細小枝)」。たくさんの小さな枝(えだ)が生えたようなもの、の意。貝の一種の名。別名「さざい」。

「榮螺子 ……和名佐左江 以蛤而圓者也」(『和名類聚鈔』)。