◎「さくり(決り)」(動詞)

「さしくるふり(刺しくる振り)」。「さし」は異物感・異事象感を生じさせることであり、一般的に表現すれば「差し」ということかも知れませんが、ここでは「刺し」と表現した方が分かりやすい。何かに何かを挿入すること。「くる」は回転動態を表現する擬態。「ふり」は「振り」と書きましたが、「彼女にふられた」などというそれであり、遊離させること。刺し、回転させるような動態になり、遊離させる、とは、何かAに何かBを挿入させA内部のBの自己回転するような(そして切り離すような)動作でAの一部をAから遊離させることです。遊離された一部はAから離され他へ移動される。

「横(よこしま)なる源(うなかみ)を決(さく)りて海(うみ)に通(かよ)はせて、逆流(さかふるこみ)を塞(ふせ)ぎて田宅(なりどころ)を全(また)くせよ」(『日本書紀』:この部分はこの前に、河の水が横へ流れて河の流れが悪い、霖雨(ながあめ)があると海潮(うしほ)が逆上(さかのぼ)り洪水が起こる、だから群臣らで相談してこれをやれ、と言っている。ようするに、「横(よこしま)なる源(うなかみ)」とは、「源(うなかみ)」の「うな」は「うなはら(海原)」の略であり、「横(よこしま))」の、横の状態の、横に広がる、海の(霖雨(ながあめ)があると)海へと流れる水の上流になる部分ということでしょう。ここを決(さく)り、水が流れるようにし、霖雨(ながあめ)になっても水が海へと流れるようにし、田畑や里に水があふれることがないようにしろ、ということでしょう。つまり、「さくり(決り)」は、土をさくって排水用の水路を作れということ)。

「鑿 サクル ホル」(『法華経音訓』)。

体内からそのような動作印象の発作が起こることを「さくり・しゃっくり」とも言い、「しゃくりあげ」という動作表現もある。

「噦噎 ………佐久利 逆氣也」(『和名類聚鈔』)。「哽噎 ……ムセフ………ナク サクル」(『類聚名義抄』:「噎」は原字は右下が「豆」ではなく「至」になっている)。

自動表現は「さくれ・しゃくれ」。

 

◎「さぐり(探り)」(動詞)

「さきへふり(先へ触り)」。「ふり(触り)」は四段活用のそれ。後の「ふれ(触れ)」。「へ」は目的感のある進行を表現する助詞。「さきへふり(先へ触り)→さぐり」は、何かを先に先にと触れること。それにより、未知の先に、期待する何かに触れることの思いがある。知的に触れること、すなわち、情報に触れる努力をすることも言う。

「愛(うつく)しと思ふ吾妹(わぎも)を夢に見て起きてさぐるに無きがさぶしさ」(万2914)。

「秘密を探(さぐ)る」。