◎「さかり(逆り)」(動詞)

「さか(逆)」(5月21日)の動詞化。「さか(逆)」の情況になること。「さか(逆)」の情況が進行する(ある動きに対し逆行する)。この「さかり(逆り)」が動態として一般化しそれが一般情況になれば「さからひ(逆らひ)」(下記)になる。「さかひ(逆ひ)」(6月1日)は「さか(逆)」が感じられる情況(その感じられは努力感でもある)が現れることですが、「さかり(逆り)」は「さか(逆)」の現れに対する表現が客観的です。

「日(ひ)に向(むか)ひて虜(あた)を征(う)つは此(こ)れ天道(あめのみち)に逆(さか)れり」(『日本書紀』)。

◎「さからひ(逆らひ)」(動詞)

「さかりはひ(逆り這ひ)」。一般的に「さかる(逆る)」情況が現れること。

「引く汐(しほ)にさからふ千鳥…」(「浄瑠璃)」)。

 

◎「さかり(離り)」(動詞)

「さけ(離け・避け)」の自動表現。「(水を)かけ(他動):(水が)かかり(自動)」、「下げ:下がり」、「(タクワンを)漬け:(タクワンが)漬かり」のような変化。遊離し、離脱する情況になること。離れた状態になること。

「大和(やまと)をも遠(とほ)く離(さか)りて…」(万3688)。

「とほざかる(遠離る)」。

 

◎「さかり(盛り)」(動詞)

「さきくははり(咲き加はり)」。ものやことが「さき(咲き)」が次々と現れ進行する情況になること。これは生態の成熟にも言い、動物の発情も意味する。

「高松のこの峯(みね)も狭(せ)に笠(かさ)立ててみち盛(さか)りたる秋の香の吉(よ)さ」(万2233:これは松茸の歌でしょう)。

「鮎走る夏の盛りと…」(万4011)。

「我(わ)が盛(さか)りいたく降(くた)ちぬ雲に飛ぶ薬はむともまた復(を)ちめやも」(万847)。

「猫にさかりがつく(発情期になる)」などという場合の「さかり」もこれ。