◎「さかえ(栄え)」(動詞)
「さきはえ(咲き映え)」。「さき(咲き)」も「はえ(映え)」もその項参照。「さきはえ(咲き映え)」は動的に開放し(咲き)環境との(社会との)相互相乗的に(特に光による。つまり明るい)感覚昂進がある(映える)こと。「はえ(映え)」は相互的・相乗的に(他との関係性のある。そして特に光の)感覚昂進を表現しますが、この場合の光源は、永続普遍的なそれたる日でしょう。つまり、「さかえ(栄え)」は日の祝福を受けたような状態になること。
「天皇(すめろき)の御代(みよ)栄えむと(佐可延牟等)東(あづま)なる陸奥山(みちのくやま)に黄金(くがね)花咲く」(万4097)。
「光 ……サカユ…ヒカル……テル」「榮 …サカユ 花サク 花ヒラク…」(『類聚名義抄』)。
・「さかし(栄し)」というこの動詞の他動表現もあります。これは、「絶え→絶やし」「燃え→燃やし」という変化の影響により「栄(さか)え→栄(さか)やし」という表現がなされ「や」が無音化したということか。この「さかし」という語は動詞「さき(咲き)」の使役型他動表現の印象も受けますが、それは、ただ開花させるのではなく、世に反映させるように示す、という意味でもちいられており、これは一般に言われるように「栄(さか)え」の他動表現でしょう。
「(明石の)入道の領占めたる所々、海のつらにも山隠れにも、時々につけて、 興をさかすべき渚の苫屋(とまや)」(『源氏物語』)。
「この古里の女の前にてだにつつみはべるものを、さる所にて才さかし出ではべらむよ」(『紫式部日記』)。
「揚 …アラハス(ル) ヒラク サカス」(『類聚名義抄』)。
◎「さかき(榊)」
「さきはき(咲き(先)葉木)」。「は(葉)」は木の葉でもあり、時間や歳月も意味する→「はは(母)」の項参照。これは樹木名ですが、この木は葉が上へ向かって開き咲いている印象がある。同時に「さきは(先葉)」は神代にまで通じるような古い時代を意味する。漢字表記の「榊」は和製漢字。
「天香山(あまのかぐやま)の五百津(いほつ)眞賢木(まさかき)を、根(ね)許士爾許士(こじにこじ)て 自許下五字以音、 上枝(ほつえ)に、八尺(やさか)の勾璁(まがたま)の五百津(いほつ)の御須麻流(みすまる)の玉(たま)を取り著(つ)け…」(万379)。