「さカイ(さ介)」。「さ」は何かを指し示し、「介(カイ)」は間(あひだ)に入ることを意味し(介入)、仲立ち(人と人や事と事の間に入り双方を関係させる(紹介・仲介・媒介))、(ものごとに介入し)援(たす)ける・支援する(介錯・介抱)、といった意味にもなる(つまり、なにかとなにかの間に入ることは、一を二にするのではなく、二を一にするように双方をつなげ関係させる(あるいは、二になるが一でなくなったりはしない(※下記)))。「さカイ(さ介)」は、その介入、その仲立ち、その支援、ということなのですが、「文A・さかい(に・で)・文B」といった言い方がなされ、たとえば「あんたはんがあんなこと言ははりましたさかい、こんなことになりました」は、「あなたがあんなことを言った」というその事象の介入でこんなことになった(あなたがあんなことを言ったからこんなことになった)、ということであり、文Bで言われることは文Aで言われることの介入でそうなのだ、ということであり、文Aで言われることが文Bで言われることの原因や理由であることが表現される。これは大阪方面を中心にした表現。
この語の語源としては「さかひ(堺・境)」の変化とする声が相当に強い。ある事象を境(さかひ)として現状がある、という表現がなされているということか。その場合、その事象が原因や理由であることは、仄(ほの)めかされはするかも知れないが、表現されない。広島方面によくある、原因や理由をあらわす「~けん(~けに)」(2022年1月18日)に起源を求める説もありますが、語音から言って問題外。
「こな様(あなた様)の死なふ死なふと言はしゃるさかいで、此やうに成た。阿呆らしい」(「歌舞伎」:あなたが『死のう』と言ったことが介在しこうなった。あなたが『死のう』と言ったからこうなった)。
「数鑓(かずやり)は己がままに鑓(やり)をぶりくりまはすさかいで、歴々の御侍衆と替事はないもんだ程に」(『雑兵物語』:(鑓(やり)は自分でいいように)振り回すことが介在し(振り回せば)歴々の侍と変わらない)。
「事象を介在させる」と言うことが「そうするから」の意にもなる。「乗(のる)ならはやう(早く)のらんせ。いっきに出すさかい」(『東海道中膝栗毛』:「いっきに出す」ことが「乗るならはやく乗れ」と要求することの理由であり原因になっている)。
※ これは分かりにくい言い方ですが、たとえば、ある大会が一回、二回、三回と分かれてもその大会でなくなるわけではない。あるいは、田が二面に区切られてもその田でなくなるわけではない。ちなみに「介」の字は、上の部分が「人」をあらわし下の部分の二本線は二つのものごとをあらわし、その二つのものごとに人が入る象形。この「介」の字は『説文』に「畫(画)也」とある字なのですが、もしかすると、「介」は、ものごとを画(カク)する、わける、事象の、人がものごとに入る場合を表現しているのかもしれない。